折原臨也を泣かせる企画/新臨



1つ。
ここに男性が寝ている。
2つ。
彼は新宿在住の自称素敵で無敵な情報屋さんの折原臨也で僕のいわゆる友達。
3つ。
この状況にしたのは紛れもなく自分だと言うこと。

彼、折原臨也は長年の付き合いである僕に随分と気を許している。だからそれがどこまでなのかちょっと気になった。例えば、僕が睡眠薬を入れたコーヒーを飲むとか、そのままなんか眠くなったからと僕のベッドを借りるとか、そのまま僕に引っ張って貰いながら歩くとか、それだけで既に例え知り合いであろうと人に対する臨也ならする事のない態度が3つも現れている。こんなに無防備で臨也は僕に解剖されるとか思わないのだろうか。忘れる訳無いとは思ってるけど、僕は君のその人間が好きという異常な感覚に興味を持った。僕から見たらどこまでも身体的に普通の人間である筈なのに妙に惹かれた。まぁ、でも臨也と静雄のどちらがより解剖したいかと言えば静雄なんだけどね。うーん、にしても本当にこんな完全に寝るなんて思わなかったなぁ。脈拍や眼球運動、呼吸音からして完全に寝ている。しょうがない、無理矢理起こそうかな、うん、自分で寝かせた僕が言えることじゃないけどね。


「いーざーや!悪いけど早く起きてくれないかな!ここで起きないと無理やり起こすよ!」


なんて言って起きる量の薬じゃないのにわざわざやるのは多分…というか確実に意外と自分が嫌な性格だからだとは思う。まぁ、そうじゃないと臨也みたいな人と友人として付き合える訳が無いかな。しょうがないな、とあらかじめそうする予定のものを取り出して、鼻歌を歌いながら綺麗に注射する。ああ、大丈夫、大丈夫。僕は名の知れた医者だからちょっと余所見しても外さないよ。


「おはよ、臨也。」

「……新羅?」


一瞬、不思議な顔をしたもののすぐに何かに感づいたのか怪訝な顔つきになる。


「なに、か、したでしょ?」

「うーん、あんまり酷いことはしてないかな…。思わぬ結果にちょっと驚愕、というか遺憾千万かな。」

「あのさ…、それより、これ何?」

「何って塩化ナトリウムのことかな、成分は…、」

「そんなこと聞いてるんじゃないって分かってんでしょ。」

「まぁまぁ、暴力反対。」


パチンと引っ張り出されたナイフを向けられて両手をあげて、敵意が無いことを示すと臨也はただ流れ続けるその塩化ナトリウムをぐいと袖で拭った。それでも本人の意志とは無関係に流れ続けるそれを見て呆れた顔をした臨也は、一発殴らせろ、と殴って来た。涙で霞んだ目では見えずらいのか、僕でさえ簡単に避けられた。いや、これでも君たちと友達な所為でそれなりにはこういうことには慣れたくないのに慣れてしまった訳で。


「まぁまぁ、落ち着きなよ。僕を殴って昏倒させたら君は間違いなく脱水症状に陥るね。知らないかい?泣き過ぎで脱水症状になるっていうファンタジーみたいな話。あれ、嘘じゃないんだよ?」

「俺、今、新羅と話せば絶対負けるからやだ。覚えてろよ。」

「それただの悪役のセリフだよ、臨也。」


ほんと、性格ねじ曲がってやがる、こいつ…ってセリフが聞こえたけど、もう聞こえない振りをした。


「にしてもさ、臨也。がっかりだよ、さっきも言ったかもしれないけど、遺憾千万だって。僕はそんなに君に信頼されてたのかな…。いや、僕は君のことずいぶん信頼をしているし、僕の100パーセントセルティで埋め尽くされている筈の脳内に強くこびり付くくらいの存在ではある。長年の付き合いになるくらいの仲だしね。だけどね、俺は人間が好きだと言って置きながら、例え友達だろうと簡単に信じたりしなかったり、最初から疑ってかかる君に惹かれたってのに…忘れたのかい?」


目を見開き、あーあって言いたげな顔をしてバタンとベッドに背中から落ちた。目はやはり薬の効果で流れ続けているように見える。


「ねえ、臨也。」


ぎしり、と臨也の上によじ登って塩化ナトリウムが流れ続けている瞼に乗る涙を避けた。


「なに…。」

「その薬の効果、10秒程度なんだ。わかってる?その涙、自然なものでしょ。」

「…っ!うっさい!新羅!死ね!」

「おおっと!」


今度こそナイフを向けられて、刺されてしまうから避けて、ベッドから落ちると、うなだれている臨也がいた。


「ほんと…もう…最悪…。」

「臨也は偶に誰かに嵌められた方がいいかと思うよ。」


そう言って、再び近づくとまだ瞼に残ってる涙を拭うと、勢いよく臨也が抱きついてきた。


「ちょ…!臨也!」

「いいから、仕返しだよ。」


バタバタと振り解こうとしたのに、涙で濡れる白衣に今日だけは仕方ないか、と大人しく抱きしめさせてやることにした。臨也もこうやって偶には泣けばいいのにな。流れていくただの塩化ナトリウムの塊が涙に変わり伝う。あーあ、僕も意外と友達思いだったんだなぁ、と片隅で思った。





【無条件降伏】




(なんか…癪だよね…。新羅に諭されるとか。)(まぁまぁ、偶には僕が'友達思い'だって証明をさせてよ。)(…やっぱ、新羅一発殴らせろ。)(って!うわっ!?)






2010,05,01

折原臨也を泣かせる企画「レイニーデイズ」様に提出。


臨也を諭すのはいつもドタチンだけど、特別な時は新羅だと思う。中学時代の臨也と新羅はギリギリまで新羅は何も手を出さないけど、本当に臨也が擦り切れそうな時は何よりも新羅が強いと思う。
何か失敗して追いつめられた中学時代の臨也に新羅が現れて、大丈夫だよ、偶には僕に任せればいいよ、とか言って、臨也を追い詰めた全員にお仕置きという名の報復をする新羅が大変見たいです。











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