折原臨也に放浪癖があったとは、例え中学時代からの付き合いであったにしても僕が知る内では無かった。確かに、彼の過去を知っている人物で一番適切且つ正確に情報を提供出来る人間と言えば、俺以外はいないだろう。だからといって、それが何になるかなんて特に気にしたことなんて無いし、それを気にする人間なんて大していないんじゃないかとさえ思う。でも、多分私までは辿り着かない。もしくはそれがわかっていたならある程度の情報を既に持っているだろうから上辺だけの情報で満足をするんだと思う。まぁ、僕も全容をサラリと言う人間では無いし、友達の約束くらいはきちんとを守る人間だしね。だが、前述の通り臨也に放浪癖があったとは知らなかった。どちらかと言うと人の集まる町に居座ってその動向を楽しそうに見ているタイプだと思っていたからだ。そんなあいつが転々と町を移動していると便りが来たのは今日のことだ。パソコンの画面にメールが来ているのに気がついて開いてみたら緑豊かな森林の写真が写っていた。本文にはキノコの原生林なんだって、と一言書いてあり、その次からはずっとそのキノコを取っている職人さんだかの話が記されていた
。珍しいねと返すと次は空色の海の写真と伴にイルカを見てきたと書かれていて、臨也は一体どこをふらついているのかと思った。返信をする度に違う場所の写真を送ってくる。だから、いつ帰って来るのかい? と返信してみたら、そろそろ帰るよ、今日新羅の誕生日だし、と書かれていた。臨也はわざわざ俺の誕生日に合わせて帰って来てくれるらしい。そんなに気にしないでいいのに、と返したら少しだけ返信が遅れて、友達だからと書かれていた。転送装置があるところまで帰るとのことだったが、それにしたって時間がかかるだろうな、と思った。セルティは今日帰るの早いみたいだから鉢合わせになってしまうだろうと考えていた時だった。玄関にある転送装置が高い機械音を鳴らした。続いて鳴り響くインターホン。早いな、と思って音声を確認せずにドアを開けた。


「新羅、誕生日おめでとう。」


そう彼がにこやかに告げて目の前には軽くラッピングされた袋が渡された。だが、それよりも気になったのは隣に並んでいたものだ。


「ありがとう、臨也。でもそれは一体なんだい?」


隣に並んでいたものがこちらを向いて、そう思うのも至極当然の話だから説明するべきだよ、と促していた。爪先から髪の毛まで全くおんなじだとしか思えないものをじろじろとねめつける様に私は見ていた。


「まだ全てが順当になっている世界の話じゃないんだけど、大体の完成形としている新羅のクローンだよ。」

「僕はオリジナルの岸谷新羅のDNA情報、細胞、その他諸々のありとあらゆるオリジナルの成分から出来ていたりするんだ。」


クローン技術自体に興味が無かった訳ではない。むしろ、一時期の僕にとっては興味津々といったものであった。まだ、その技術は完全に認められたものでは無いけれど、今じゃ町を堂々と歩いているクローンも隠れてたくさんいる。だから、僕のがいたとしても技術的に何か驚くことがあるとは思えない。だが、彼がそれを連れてきたことに驚いたのだ。臨也が俺のクローンなんか作って一体どうするんだと思った。何かが変わる訳でも無いのに。ただ、私達は中学時代からのお互いがお互いの無二の友達だと言っても過言では無いだろうと言うのに。唯一では無いのが彼と僕の違う点だが。それでも、欲に素直過ぎる私には例え自分の形をしているクローンであれ中身が気になるのは事実。どんな風に構築したのか開いて考察してみたくて堪らない。


「ねぇ、臨也。彼を解体しても良いかい?」


同時に弾き出された言葉に驚愕しながらも不可解な気持ちが混ざる。臨也は俺と彼の間に立ち塞がり、ほんとにそっくりなんだからと笑った。


「二人共ダメだよ。新羅は俺の大切な友達だし、新羅は俺のだろ?」


臨也は最初に僕の方を見て、名前を呼んで次に彼の方を見て自分の所有物だと言った。


「ねえ、臨也。彼は君のものなの?」

「そうだよ?俺が作り上げたんだ。新羅にはセルティがいるから諦めるしかないって思っていたんだ。ああ、それは勿論新羅がセルティに会っていなくても変わらないよ。それは新羅には当たり前の事実だよね。それでも、俺は、新羅をずっと見ていたかった。だから、新羅とは友達でいようと思った。俺の唯一無二の親友だと思っているよ。でもやっぱり俺は新羅が良かったから新羅を作って、新羅を俺のものにした。独占欲をそのままモノにしたんだ。だから、新羅は俺の友達。新羅は俺のもの。クローンの新羅はセルティが一番じゃないんだ。」


そう言うと臨也は彼の方を向いて、眼鏡を外した。そうすると彼はそれが当たり前の様に臨也の頬に手を当てて唇を重ねた。自分と全く同じ容姿が目の前で臨也とキスをしているのに嫌悪が有るわけではない。だって、彼は彼であって私ではないのだから。だから、これはつまり、俺ではないのだからイラつきが出ていると解釈するべきなのか。馬鹿馬鹿しい、不可解極まりないよ。




【ハッピーアンチドート】





20110404
新臨。
ついったの診断で近未来パロで嫉妬する新臨を書きましょうと言われたので、誕生日記念に!
私の中の近未来→クローンやら瞬間移動やら
嫉妬は臨也だと多そうなんで新羅にして貰いました。










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