※RAD曲×臨也受け企画「ハロー、弱虫。」様に提出。
※中学時代の捏造新臨です。




また今日もサボりか。

先日の、俺にとっても彼にとっても何気ない行為から臨也が学校に来ない。毎朝8時半にメールが来て、休む、とだけ書かれている。返信はわかった、と簡潔に返すことにしている。それ以外にどうしたの?だとか、風邪?後で診に行こうか?だとか返すと何も返って来ない。メールを送信してから少し経つと携帯が微弱に点滅して、先生によろしく、ありがとうと返って来る。朝のホームルームはこれで終わる。このクラスでは僕と臨也がそれなりに仲が良いと思われているらしく、流石にもう3日連続で休んでいる臨也を訝しげに思ったのか担任に呼び止められた。


「岸谷、お前折原から何か聞いて無いのか?」

「朝、メールで休むって来ること以外はわからないです。」


担任はそうか、とだけ答える。家にはいるみたいなのか?と問いかけたいのがバレバレだと思う。聞いていないし、行っていないからわからない。しょうがないと私は、今日、臨也の家に行ってきますよ、とだけ伝えた。

臨也の家で呼び鈴を鳴らすと、臨也の母親らしき人が出た。同じ中学の友達だという旨を話すと上げてくれた。臨也は部屋にいるらしく入ってって良いと言われたから軽くノックをした。返事はなかったが、入った。親への口実だろうか、ベッドで横向きになっていた。カバンを床に下ろして、臨也の腕に手を伸ばして脈拍を測った。正常であることに少し安堵した。


「新羅……、」

「なに?」


急に話し始めた臨也がこちらを見るでもなく、ただ名前を呼んだだけでしばらく時間が過ぎた。カーペットの上に座りながら壁に掛けられている時計を見て、あまり長居は出来ないだろうと思った。だが、無理をしてわざわざ内容を聞きたいとは思わなかった。それでもこのまま帰ろう、などとはより一層思わなかった。


「新羅、」


再び呼ばれたのが気になり、顔をそちらに向けて答えようとしたら引っ張られてベッドにぶつかった。臨也は半分泣きそうな顔でもう半分は嫌みな顔で俺に向かって唇を合わせてきた。俺は何か抵抗するでもなくただ、ただ目の前にいる人物のされるがままになってみた。この続きも果たしてするのかしないのかわからないが、ただ臨也はそのまま離れた。呆然と向かい合い、嫌みな顔で好き、と告げられた。更に泣きそうな顔で嫌い、と告げられた。どっちなんだ結局。僕から見たら答えは変わらないかもしれない話だけど、実際にどっちかなんて分かりやすすぎて問題にもならない。それでも私は都合のいいように解釈して彼がまだ僕の瞼の上に乗っていて貰うことを願うのだろう。好きか嫌いか、はっきり言えるのは彼に、臨也に嫌悪感なんて一切感じない。むしろ、好感があると言える。けれど、そうじゃない別の感情の左右は棚に上げたままだ。見えないように置いているだけだ。だから、判断を付けない。むしろ、そこにそういう観点で置いていないのは彼女だけなんだと思う。だから、僕は彼女が好きで仕方ないのだ。いつだって見えるのは1人じゃなきゃいけないとそう思っ
ているんだ。臨也の頭を撫でると払われると思ったが意外にもされるがままだった。


「臨也、明日は学校来よう。迎えに来てあげるから。」

「……うん。」


臨也の好きにも嫌いにも反応を返さない。返す資格も義務もないからだ。それに鼓膜が震えなくて僕の中に入らなかったんだ。もっと、もっと震わせてくれなきゃ、返せない。臨也の部屋の壁はコンクリートみたいな灰色のだと思った。こういうのって案外直ぐに壊れてしまうって知らないのかな。いや、実際コンクリートじゃあ無いんだけどね。もぞもぞと座ったままから動き出した臨也はまたベッドに戻った。


「お腹いたい。」

「なんか変なもの食べた?」


新羅って僕の名前が返ってきて頭を抱えた。


「新羅のせーえき食べたじゃない。」

「ちゃんと掻き出してあげたじゃない。」


それでも俺は新羅のせーえき食べたんだ。他に変なものなんて食べてないよ。新羅が一番変なもので一番、一番今更だけど後悔した。新羅には教えて貰わなかった方が良かったかも。お腹いたい。いろいろもやもやしてる。俺の中で新羅しか見えなくなってる。もう意味がわからない。全ての人間が同一に見えてたのにそれが全部瞼の上に追いやられてしまって、どうしたらいいの。なんて言われても僕にはわからない。ただ、臨也が臨也自身を守れるか心配になった。どうしてあんなに歪んでるのにこんなとこは弱いんだろう。守りたくなるじゃないか。


「ねえ、これからも教えてよ。」


真剣な顔でこちらを見る臨也に何も返せない。簡単にいいよ、なんて話せない。それでも彼はそれを望むのだろう。


「教えて…あげるよ。」

「なんでそんな顔してるの。嫌ならいいんだよ。」

「嫌じゃないよ。」


抱きしめてみた。新羅、泣きそうな顔してる、なんて耳元で呟かれた。臨也は嬉しそうに笑っていた。



【魔法鏡】




2011,01,07

新臨。

補足。
新←臨から新(→)←臨に傾きかけている新臨です。新羅はセルティが大好きなのでそのほかの全てを瞼の上に置いて、見えないのに臨也を守りたくなった。そんな新臨です。中学時代の新臨の話は一時終わりです。また単発で書いたりするかもしれないです。来神時代はまた違った2人だと思うんですよね。それはまた今度。









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