新臨企画「Gpin!」様に提出します。
※中学生時代の捏造と全テネタバレがあります。





学校一の奇人と名高い奴がいた。所謂その手の噂で有名な奴。やたら近付くなとか関わるなとかキチガイだとか言われている人間。学年に1人くらいはいる残念な頭の持ち主。そんな噂を常々聞いていたからか俺はそいつに会うのが楽しみで楽しみで楽しみで仕方無かった。だってつまり素晴らしい人間が見れるということなのだから。


「それで、君は何の用なの?」

「会いに来たんだ、君に。」

「熱烈なプロポーズありがとう。ところで、今、私は彼女の手作り弁当に舌鼓を打っている所なんだ、少し待ってくれないか。」


果たしてそれは食品と呼んでいいのだろうか、形容がし難いものだった。黒ずんでいるとかならまだいい。食べている時の音がおかしいのだ。ジャリジャリとまるで砂でも食べているかのような音が2人しかいない屋上に響く。屋上のドアの鍵は既に締め切っているから誰か入って来ると言うことも無い。斜め後ろから風が吹いているせいかバタバタと髪の毛や服が揺れる。


「あのさ、これは忠告なんだけど、それ明らかに食べ物を食べる音じゃないと思う、止めなよ。」

「音とかそんなものは彼女が僕に作ってくれた手作り弁当を食べないという選択肢に繋がるとでも思うのかい?君は愛を捧げることから無縁なんだね。」

「そのセリフは酷い間違いだ。岸谷くんになら言ってもいいんだけど、俺は世界中の人間が好きなんだよ。」


なんで俺にそれを言うんだろう、みたいな顔をしながら岸谷くんは弁当を全部食べ終わったのかそれを袋に包んで、屋上ねフェンスに向かった。ギシギシとフェンスの強度を確かめるようにすると面倒くさそうな目でこちらを見た。


「例えば、ここから私が飛び降りたら君は助けてくれるかい?」

「随分といきなりな問いかけだね。」

「まぁ、それはご愛嬌ってことで。僕の勝手な見解だけどさ。折原君は誰かが目の前でここから落ちようとしても勇猛果敢にそれを助けようとはしないと思うんだ。それは多分その人にとって飛び降りるというそれが最良の選択肢であり、それがその人の一番の幸福に繋がると思いつけることにするからかな。飛び降りる行為をする人間の多数は飛び降りるのを無理やり止めるとそれを止めた人間に罵倒を飛ばす。わざわざ危険を省みずに助けてあげたにも関わらずだ。だから人間を愛している俺は人間が個人にとって最良の選択肢を選んだのならそれを愛しているが故に止めない。つまり、助けないってことさ。」


ダルそうな声で説明した癖に長い言い回しだと思った。思った通りの人間だと理解した。隠れているようで隠しきれていないのはわざとなのか天然なのかはわからない。だが、純粋に彼は最初から線を引いた先に位置する人間なのだと思った。目の前のこちら側にはいない線に寄って隔離された岸谷新羅を見て、そう思った。


「それで岸谷君は飛び降りたいの?」

「いや、飛び降りたくない。だからもし落ちた時は折原君の全身全霊を掛けて助けて貰おうと思うよ。だって、人を愛しているんだろう?慈善事業みたいな行為をする人の性格にぴったりじゃないか。」


それを笑顔で言ってのけた岸谷新羅はこれからどこからか落ちる危険があっても折原君が助けてくれるから安心だなぁなどと言い始める。その考えはおかしいだろう。俺がその場にいなかったらただ岸谷は落ちるだけじゃないかと正論が浮かぶ。だが、多分それを言えば、何かしらからかわれるのではないかという疑念があるせいで言えない。


「ところで、人間が好きってどの程度までなの?」


至極当たり前な問いだと思う。どのあたりまで好きなのかとか、ダルそうにしていた筈の岸谷が興味津々というような風体で聞いてきた。人間以上に好きなものなどが無いと素直に答えればいいのか。それとも別のなにかか。ただ、岸谷が満足するような答えだけはなんとなく嫌だった。だからか、俺はこいつと良い友達になれそうだと思った。


「全ての人間を友達で恋人だと思ってるくらいには人間が好きだよ。」

「つまり、全ての人間に性的欲求を発揮出来るってことかい?それは興味深いね。両性愛ってことかな?あっ、それとも恋人にするだけで性的欲求は全く感じない無性愛かい?動物には子孫繁栄を願う本能があるけど、無性愛って人も日本には少なくないからね。で、どっちなの?」


その気になれば出来ないことはないんじゃないかなと過度な考えも頭に浮かべてみたがなんとなく笑ってしまった。多分、友達で恋人と思うのと別に性的欲求を発散する相手が必要になるのだろう。でも、せっかくだから冗談混じりに言っても良いんじゃないか。


「岸谷にもちょっとくらいは性的欲求を感じることが出来るくらいじゃないかな?」


驚いた顔をした岸谷を見て、次に冗談だよと言えば終わりだった筈なのに岸谷が目の前に来ていて、手を引っ張られて壁に背を当てられた。

「ねぇ、そんなに言うなら抱かせてよ。」


本当に性的欲求の機能が反応するのか気になる。もしそうなら他の人にもなるのか、性的欲求は脳に対応してる筈だから。ああ、ええと、もしこれが実証されたら是非解剖させて欲しいなぁ。ああ、大丈夫死なないから。これでも解剖は得意なんだよ。4歳からやってるから。


「ねぇ、痛いんだけど。」

「ああ、ごめん。」

岸谷が手を離すと同時にパチンと取り出したナイフを向けた。それ本当に刺せるの?、と聞かれて、今度はヤケになって岸谷の腕に突き刺そうとした。けど、手が動かなくて、止まってた。刺していいよ、なんて普通は言わないだろ。それにつられて岸谷の腕を切った。代わりに首筋に冷たい何かが当たった。


「切るの下手だね。教えてあげようか?だからさ、友達になろうよ臨也。」

「奇遇だね、俺も思ってた所さ、新羅。」


キスでもしそうなくらいの近い距離で放たれた言葉は友達になろうという親しみを表す言葉だった。



【そんなに言うなら抱かせてよ】






2010,12,15

新臨。

新臨企画様に提出します。
新臨の中学生時代を想像するだけで悶えます。素敵な企画の一端を担えて幸せです。








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