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笠松先輩のギターを聞きに行けるのが楽しみで、今日はいつもより足取りが軽く家を出れた。笠松先輩のギター聞きに直接行っちゃいたいくらいだけどそうすると課題が確実に終わらないので思いとどまる。

教室に行くとまだ黄瀬くんは来ていなくて、何もない教室だけだった。私は窓際の席に腰かけて、海を見る。あー、海行きたいなー。なんて、補習受けてる私が言える台詞じゃないけど。何だか高校生初めての夏休みは短期のバイトとかいれちゃったり勉強したりであまり夏らしいことできなかった気がする。お祭りも花火も海も行ってない。きっとあの砂浜には仲良しなカップルや親子連れで賑わってるに違いない。そんなことを思いながら私は鞄から勉強道具を出す。

すると、黄瀬くんがちょうど来た。

「今日はなまえの方早かったっスね!」

そう言いながら、教室に入ろうとする黄瀬くん。そして、後ろの誰かにお疲れっスー!と言っていた。そこにいたのは、笠松先輩で。目があった。私は何だか少し恥ずかしくなった。そして、ペコリと頭を下げると、あちらも会釈してくれた。笠松先輩はそのまま教室を過ぎていってしまった。黄瀬くんがその様子を見て首を傾げる。

「なまえって笠松先輩と知り合いだったんスか?」

『昨日知り合ったの』

私がそういうと、黄瀬くんは驚いた顔をする。

「昨日!?」

『黄瀬くんが寝てる間にこの前ギターの音聞こえたのが気になっててそれでギターの音聞こえたから会いに行ったんだ。そしたら弾いてたのが笠松先輩で!』



そう言うと、黄瀬くんはなるほど、と頷く。

『今日も聞きに行くんだー』

そう言うと、黄瀬くんはえーずるいっスよー!と唇を尖らせた。

「俺も行きたいっス!」

『じゃ一緒に聞きに行こうよ』

そう言うと黄瀬くんはやった!と笑った。そして勉強道具を出すこともなく鞄を持つ。

『え?勉強は?』

私がそう尋ねる。

「なまえもそろそろわからないとこ増えてきたでしょ?だから笠松先輩についでに教わりにいくっスよ」

モデルの整った顔でウインクする黄瀬くん。なんていうか輝いて見える。

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