1
次の日。また同じ時間に昨日と同じ教室で。数学の補講である。正直解ける問題が少なくなってきたので、今日は参考書をちゃんと持ってきた。教室に行くともうすでに黄瀬くんはいた。

『黄瀬くんおはよう。って、おはようの時間じゃないけど!早いんだね!』

「午前中は部活だったんスよ」

昨日話したおかげで黄瀬くんとは割と話せるようになった。 黄瀬くんの隣の机に鞄をおいて、椅子に座る。教室はとても暑くて、もう8月の終わりだなんて感じさせないほどの熱気だった。

『こんな暑い中で勉強したって頭に入りそうもないのにねー』

そう言ったら黄瀬くんはホントそのとーりっス、と机にだれながら言った。窓があいていて、向こうに海が見える。うちの高校が人気なのは絶対この景色があるからだと私は信じていた。綺麗な海が見える、この景色だ。時間になって、私たちは昨日渡されたあのものすごい量のプリントに手をつけ始めた。参考書を読んでもわからないところがたくさんある。やっぱり夏休み最終日までに終わる気がしない。黄瀬くんの方を見れば、どうやら寝てしまっているらしい。部活で疲れたのかもしれない。うちの高校の中でも最も力をいれている部活のひとつであるバスケ部だし。しかも噂によれば一年生で唯一のスタメンだとか。きっと大変な思いをしてバスケしてるんだろうな、とあまりにも整った寝顔を見ながらそう思った。

参考書を開いて、その考え方を写していると。昨日聞こえたあの曲が。またギターの音が、聞こえた。私は顔をあげて考えた。昨日行って間に合わなかったんだ。今日の今こそ、誰が弾いてるのか見に行くべきじゃないか。黄瀬くんは寝てるし、先生に見張られているわけでもない。私は、プリントを閉じて机の上を整理する。そして、黄瀬くんを起こさないようにそっと教室から出た。

階段を一段上がるごとにだんだん大きくなるギターの音。一体どんな人が、この曲を弾いているんだろう。階段を上がり終え、一つ一つの教室の中を見る。そしてまた違う、違うと歩くたびに近づくギターの音。そして、ついに。私はその演奏者を見つけたのだった。

- 3 -


[*前] | [次#]
[戻る]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -