1
ガビーン。青ざめた顔で数学教師に渡された紙を見る。真っ赤なペンで書かれた13の数字。そして補講対象者へのお知らせと書かれたプリント。やってしまった。
8/27から四日間の補講があります、と。私はそのプリントを持ったまま震えた。私の夏休みが。高校生になって一番最初の夏休みが!その最後四日間が補講で消えようとしている。
『どうしようひっかかっちゃった…』
数学の定期考査で赤点だった人が皆受けた試験。これで30点とった人は補講を免れ、それ未満の人は皆 補講。何人かいた一緒に試験を受けた友達は皆合格していた。
『もしかして私一人!?』
そう皆に聞いたところ、隣のクラスのあの有名な黄瀬涼太くんが補講にひっかかったらしい。他はまだ誰も聞いていなかった。
「いいな〜!黄瀬くんと一緒とか!私も落ちればよかった〜」
たくさんの女の子にそんなことを言われた。変われるもんなら変わってほしい。確かに黄瀬くんはかっこいいと思うけど身長大きくて少し怖いんだよね。まぁ他にも誰かはいるだろう。
そんなこと考えて。8月27日。指定された教室に入った。そこにいたのは長身金髪で有名な黄瀬くんしかいなかった。
「あれ?君も補講っスか?」
私に気づいた黄瀬くんが話しかけた。私は話しかけられたことにビックリしてしまって挙動不審になる。
『えっとあ、はい』
そう言うと黄瀬くんは笑った。
「そんなかしこまって何なんスか!タメじゃないスか!タメ語でいいんスよ!俺黄瀬涼太っス!って自己紹介しなくても知ってるっスよね」
思いの外たくさん話す黄瀬くんにびっくりして、私も自分のことを話した。
『あ、私はみょうじなまえです』
自己紹介が終わると、数学の先生が入ってきて、ものすごい量のプリントを渡された。
「これを四日間のうちに解け。俺は四日後にもらいにくるからな」
その一言だけ告げて、先生は教室から出ていった。
- 1 -
[ ] | [次#]
[戻る]