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どうやら、ひっかかったのは私と黄瀬くんだけだったようだ。
「これってつまりこのプリント早く解き終われば1週間も拘束されなくてすむってことっスよね!?」
黄瀬くんがそう言った。
『多分そうじゃない?』
でもこの量正直終わるかどうかすら危うい量じゃ…と私は思う。裏表にびっしり書かれた数字やアルファベット。絶対終わらない。私と黄瀬くんはとりあえずそこで解き始めることにした。
シャープペンを持ち、問題を眺める。このときのaの値を求めよ。パス。xの最小値を求めよ。パス。気づくとページを捲ってしかいないことに気がついた。黄瀬くんもどうやら同じような感じらしく、頭を抱えていた。とりあえず解けるところから解き始めることにした。
しばらく解いていると、どこかからかギターの音がした。優しくて素敵な音だ。軽音楽部の誰かが弾いているのだろうか。知らない曲だった。でも聞いてて心地がよい音だった。その曲が終わったようで、また別の曲をその人は弾き始めたようで。その曲は私も知っている曲だった。 かっこよくて好きな曲。さっきの曲とはまた違った魅力を感じる音で、かっこよく、荒々しい音をしている。少し自身でアレンジもしているようで私が知っているその曲とはたまに違って。でもそんなところも私は好きだったりした。一体どんな人が弾いてるんだろう。恐らく上の階だから先輩だろう。この補講の時間が終わったら行ってみよう。私は誰が弾いてるのかとても気になって早く時間が過ぎないかななんて思ってた。そして、終了時刻の5時。もうそのギターの音は聞こえなくなっていた。でも、もしかしたら。そう思って。
『黄瀬くんまた明日!』
「じゃーね、なまえちゃん」
黄瀬くんに別れを告げて、すぐに教室から一番近い階段を駆け上がり、上の階に誰かいないか探した。でもそこには誰もいなくて、私はがっかりしてそのまま今日は素直に家に帰ることを決めた。一体、あの音は誰の奏でた音だったのだろうか。 もやもやしながら、私は帰路をとぼとぼと一人で歩いた。
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