宮地の失恋
いつだって、笑顔で俺の傍にいたお前はもういない。
『きよー!お疲れー!』
試合後に笑って、部外者にも関わらず控え室に来ちゃうお前も。
『じゃ、ここ代入でいいの?』
身長差ゆえに上目遣いになって、俺にくっそ簡単な問題きいてくるお前も。
『かっこよかったよ。負けても、最後まで諦めなかったきよはかっこいいの』
引退してすぐに俺のとこに来てくれたお前も。
『また一緒だね』
そう言って同じ大学の同じ建物に入るお前も。
『きよの推しメン雑誌にのってたから切り抜きあげる』
推しメンよりずっと好きだって伝えられなかったお前も。
『きよ、私彼氏できたの!』
は?って言った俺にこれでもかとのろけるお前も。
『きよ、私結婚することになった』
そう伝えてきたお前も。
ずっと好きだったのに。
「よっ」
控え室に行けば純白のドレスを纏ったお前がいて。今まで長い間見てきたどんなお前よりずっと綺麗で。でもその横を歩くのは俺じゃなくて。
『きよ……』
「綺麗だな」
そう言えばお前ははにかんで。
『きよにそんなこと言われたのはじめて』
お前以外誰にも言ったことねーよ。
そう伝えることはできなくて。
「幸せになれよ」
『き、きよ待って』
泣きそうな顔を見られたくなくてお前に背を向ければ、呼び止められて。
『きよのこと、本当はずっと好きだったよ。一番好きなのは、ずっときよだったよ』
こいつ何言ってんだよ。
「は?え、嘘「花嫁さーん。準備が整いました」
式場の人があいつを呼んで。 お前は何事もなかったように返事して。
『最初で最後の告白だよ』
そう悲しそうに笑うお前を俺は止められなくて。控え室には俺だけが残された。
……そんなのずりぃだろ。
伝えればよかったなんて、後悔一色に染まった。
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