宮地と卒業式



誰もいない放課後。私は体育館でただ一人を待っていた。

ガラッ!

体育館の扉が空いた音がした。

『遅いですよ』

「悪いな」

宮地さんがステージに腰かけていた私に近より片手を出した。

「お前のためにちゃんと第二はとっといた」

その手から落ちたのは学ランの第二ボタンで。私は手のひらで光るボタンを握りしめた。

『他のボタンはどうしたんですか?』

わかってるけど聞いてみる。

「悪いな。なんか女子にとられたりして」

『ふーん』

わたしは唇をとがらせ、そっぽを向いた。宮地さんは苦笑いした。

「悪いっつってんだろ」

宮地さんがわたしをステージから下ろすように手を引っ張り、私はその力に逆らうこともできず宮地さんの胸に飛び込む。

私は思い切り宮地さんに抱きついた。

『宮地さん行かないで』

「それは困ったお願いだな」

『私は宮地さんと毎日会える学校が好きです。宮地さんと一緒にいられた体育館や部室が好きです』

ぎゅーって宮地さんの背に腕を回す。宮地さんの匂いがした。ずっと一緒にいたいのに生まれた年が2年違うだけでこんな寂しい思いをしなきゃならないなんて。

『大学に可愛い子いっぱいいたらやだな』

そう言って離れようとしないなまえに宮地はため息をついた。

「んなわけあるかよ」

『あるもん』

「俺はお前以外見てる余裕なんかないっつーのに?」

え?その音は宮地さんの唇に吸い込まれた。

唇が離れたら涙が出てきて、宮地さんのボタン一つない学ランを濡らした。

『遊びに来てください。いつでも会いたいんです

「あんま可愛いこと言うな。どんどん卒業したくなくなるから」

そう言って宮地さんは私の額に唇を落とした。

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