福井と初詣



「寒くねーか?」

健介が私に尋ねた。

『寒いって言えば寒いよ』

それもそうだ。私たちは秋田のこの寒空の下、初詣するために行列に並んでいる。寒くないわけがない。

「ったく、しっかり着込んで来いよな」

健介が自分がしていたマフラーを私の首にしてくれた。健介の匂いがする。

『…あったかい』

「おう」

健介が私の手を握った。
すると、周りが騒ぎ出した。どうやら年が明けたらしい。

『あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします』

健介に言うと、こちらこそ、なんて堅苦しく返された。

雪が舞う。ただでさえ真っ白い景色が空まで白く染まる。

『健介何お願いするの?』

「言わねーよ」

健介が言った。

『ケチ』

「誰がケチだ」

健介に頬をツンとつつかれた。

「なまえは何お願いすんだよ」

『内緒ー』

「ケチ」

『ケチじゃないもーん』

順番が回ってきて、二人でお賽銭を投げる。
そして手を合わせて念じた。

「(なまえと同じ大学行けますように。てかずっと一緒にいるわ)」

『(健介と同じ大学に行けますように。そして健介とずっと一緒にいられますように)』

同じことを祈ったとはつゆ知らず、二人はまた手をつないで歩き出した。甘酒をもらって、歩く。

「あったけーな」

『うん』

「なまえ」

『何?』

「来年もまた来ような」

『…うん!』

笑いあって雪道に足跡を残す二人。お願いしたことに近づけるよう、二人は小さな約束をしたのだった。






(本当はずっと一緒に来ようって言いてーんだけどな)
(来年どころかずっと健介としか来る気ないよ)

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