紫原と別れ話



「俺は別に○○ちんがいいならいいけどー?」

私の前で敦が言った。私だって別れたくないよ。まだまだこんなに敦が好きなのに。

『もう辛いの。別れよう』

そういう私の顔は笑えてるのだろうか。いや、そんなことはない。

味気のないカフェオレが喉を潤した。それでも声はカラカラで。

もうね、敦の浮気癖にはうんざりって何度も思ってきたのに何でこんなに好きなんだろう。涙が溢れそうなのもわかってる。でも敦の前で泣いたらまた優しくされて気が変わってしまうのわかってるから。泣きたくない。

敦は運ばれてきたパフェを頬張っていた。いつもと変わらないその表情、仕草にああやっぱり、と思う。敦は私じゃなきゃいけない訳じゃないんだ。

「ねぇ、」

敦が言った。

「何で○○ちんが泣いてんの?」

敦の指先が私の頬の涙に触れた。ああ、私泣いてたんだ。

「いやなら、別れるのやめりゃーいいじゃん」

敦が私の涙を服の袖で拭ってくれて。その瞬間私の中の決意は脆く崩れてしまって。

ああ、バカな私。

『敦……好きだよ』

「ん?俺も〜」

嘘だとわかりきっているその言葉にすら安心してしまうほど私は敦に溺れてしまっているようだった。





◎あとがき
イメージソング
「05410−(ん)」 RADWIMPS



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