小学三年生の恋心



 あつい、あついッス。その言葉だけが頭の中に浮かんできて頭がボーっとしてきた。いつもだったら嬉しくて走って帰る道も今日だけはとてつもなく長く感じて走る気もしない。手もずっと重い朝顔の鉢植えを持っているせいか痺れて痛いし、やっぱりお母さんに迎え頼めば良かったッスとか思いながらオレは数歩先にいる幼馴染へと声を掛けた。

「玲ー、ちょっと休もうッスよ」
「やだー」

 即答で返って来た声にガックリと項垂れる。何で同じ量の荷物を持っているのに玲はあんなに平気そうなんッスか……と思いながら、だからと言っていつもみたいにへなちょこ扱いされるのが嫌で地面に置きそうになった鉢植えを手に力を込め何とか踏みとどまらせた。ああああヤバい玲に置いて行かれるッス!!

「涼太ー。お家帰ったらかき氷食べよ」

 新しいかき氷器買ってもらったのー。と突然振り返ったかと思えばまた歩き出した玲の後を気が付いたら全速力で走っていた。やっとの思いで追いついた玲の隣。追いついてみれば思っていたよりもずっとゆっくりとした足取りで玲が歩いていたこと嬉しくて思わず顔がにやけてしまう。

「玲、好きッス!」
「うん、私も好き」

 にっこりと笑った玲に心臓がバクバクとして顔が真っ赤になったのが自分でも分かった。う、嬉しいッス……!!

「かき氷美味しいもんね」

 ……力が抜けて気が付いたら涙と一緒に手から鉢植えが落ちていた。


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