さようなら私の日常よ



 ……どうしてこうなった。いや本当にどうしてこうなったんだあああああ!!

「ほら白村、現実逃避してないで俺の目をきちんと見ろ」
「は、はい……」

 目の前に座る満面の笑みを浮かべた赤司君を筆頭に後ろに立つ黒子君に両肩を掴まれ逃げられないようにされ、その周りには鬼ごっこをしたレギュラー陣。再び……というか今度こそ完全に逃げれないように包囲された私は冷や汗かきながら目の前の赤司君に引き攣った笑いを返す。
 ――あの後笑顔の黒子君にバスケ部の部室へと連行され椅子に座らせられたかと思えば上記のような地獄絵図が出来上がったという訳だ。ただでさえ赤司君に逆らってしまった今何をされるのか怖いのに、何が楽しくて笑顔の赤司君を見なくてはいけないのだ。恐ろしすぎるだろう!!誰か変わってくれ!!

「そんなに怯えなくてもこれにサインしてもらえれば直ぐに解放してやるから」

 そう言って赤司君が机の上に置いたのは入部届だった。ご丁寧に氏名以外の所は赤司君の字で全て書かれており、おまけに既に顧問の印までしてある。おいいい、これだめだろがあああ!!生徒会の顧問がなに規則違反してるじゃああああ!!
 うおおおお……と頭を抱える私をお構いなしに有無を言わさず鉛筆を握らせてきた赤司君のオーラに反論も出来ず助けを求めるべく周りに視線を向けるが青峰君以外全員諦めろと言わんばかりの視線と肩の威圧を受けた。(因みに青峰君はニヤニヤしてて殴ってやりたくなった)

「あの、ね?私生徒会長やってるじゃないですか、だから……」
「ああ、大丈夫だ。顧問からも許可は貰っているし、俺も手伝うからな」

 何か問題でも?と目を細めた赤司君の手からミシミシと嫌な音が聞こえてきて思わず視線を向ければ、彼の手に握られていた鉛筆が悲鳴を上げている所だった。
 ……逆らえる訳無い。涙目になりながら私が空白の欄を埋めれば、満足そうな表情で完成された入部届を掲げた彼にレギュラー陣もおお、と何故だか拍手をしている。
 途端に首元に腕を回し抱き着いてきた涼太に振り回されながら私は意識が遠くなるような感覚がしていた。
 嗚呼、本当にどうしてこうなった……。

2012/11/04

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