不意打ち反則!



「ねえねえ玲ー、この前新しいテレビ買ったんスよ!」
「ほう」
「前のヤツよりずっと大きくて、めっちゃ綺麗で……」
「うんうん」
「だから今日一緒にバハオやろうッス!」
「よしきた、行こう!」

 ――という訳で涼太とゲームすることになりました。御互い今日はオフだったので授業終了後(女子たちに見つかる前に)学校を出て、取り敢えず自宅近くにあるコンビニに行く。立ち寄った理由は勿論小腹が空いた時用の食料を調達する為だ。最早恒例となっているので仕方がない。うん。
 入店してさっそく涼太の特技披露に使われる大量の水がカゴの中に投入され思わずげんなりしてしまった。またやるの?なんて文句を言えば、分かるようになった種類が増えたとか何とか言われる。いや、全然意味分からんから。
 私も適当に飲み物を選び、今度はスナック類が陳列された棚へと向かう。棚の前で何を買うかはしゃぐ涼太の顔を見ていたら、思わずこの場を涼太のファンに見られたら私フルボッコにされるんだろうなー、なんて恐ろしいことを考えてしまった。
 ……うわ、考えただけで身震いがしてくる。やだやだ、と首を振り私もお菓子吟味に集中することにした。ポテチやらシャカリコやら油っこいものばかりが置かれた上段のお菓子はいまいち食べたい気分ではなかったので下を見ようとしゃがみ込む。なんだ、駄菓子類下に一杯あるじゃん。

「おーうま……じゃない、まいう棒新作出てる。“牛丼味”?これ美味しいのかねえ……」
「それ、美味しいよー。あーでもそっちの“醤油プリン味”も良いかなあ」
「へえ、そうなんだ。じゃあ両方買おうかな……ってうおおおおおお?!」

 涼太だと思って話していた人物は彼ではなく、紫色の髪をした大きな人だった。しゃがんでいるにも関わらず十分ある高さと大きさにビビり声が出なくなってしまう。び、吃驚した……!!

「玲お菓子決まったッスかー?ってあれ、紫原っちなんでいるの?」
「あ、黄瀬ちんじゃーん」

 距離を取ろうと涼太の後ろに隠れればどうしたの?なんて困った様な顔をして見てくるので、反射的に逃げたなんて言える訳もなく取り敢えず脇腹を突っつくことにする。ぶへっと情けない声を出す涼太を見て笑う彼の顔を改めて見ると、涼太と同じバスケ部レギュラーの人だということに気が付いた。……そうか、彼が紫原君なのか。さつきちゃんや黒子君たちからよく話を聞くので存在は知っていたが、名前と顔が一致したのは今日が初めてだった。
 
「そこにいるのって白村でしょ?オレ知ってるし」
「紫原っちがバスケ部以外の人を知ってるなんてちょっと意外ッスね」
「赤ちんから聞いてたし、この前来てたじゃん」

 でしょー?と横から覗き込まれ私も同意の意味を込めて頷く。良く見れば彼の足元には大量のお菓子が入ったカゴが置かれていた。話に聞いていた通り本当にお菓子が好きなんだな、と思ったのと同時に彼が纏う緩い雰囲気に私も気が緩んだのかそれとも拍子抜けしたのか、気が付けばほぼ素の状態でお菓子大好きなんだね。なんて言葉を掛けていた。

「うん。だってお菓子は正義だしー」

 嬉しそうに笑った無邪気な笑顔に毒気が抜かれてしまう。思わず吹き出した私に失礼だなー、なんて少しだけムッとした顔をしていたが、それも合い余って紫原君の体格に反した子供らしい純粋な姿に少しだけ彼が可愛く思えてしまった。
 ――あの後聞いたのだが涼太曰く紫原君はこの近くに住んでいる訳ではないらしい。どうしたのかと直接尋ねれば先程話していた牛丼味のまいう棒を買いに来た答えてくれる。彼の近所では売っていなかったので、近くのコンビニを巡っていたとか。どんだけお菓子好きなんだよ。
 しかも私が新しいもの好きなこともあって紫原君ともあっさりと打ち解け、機嫌をよくした彼もくっ付いてくる形で今日のゲーム大会は彼を加えての開催となった。……おまけに紫原君が写メをレギュラー全員にしたらしく、数分後嬉々とした黒子君を筆頭に団体御一行が涼太の家に雪崩れ込んで来たのはまた別の話である。

2012/08/24

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -