可愛いは正義!



『オレ、バスケ部に入部することにしたッス!』

 ……ついに来たか、と私は携帯を見つめ息を付いた。
 どうもこんにちは、長いようであっという間に季節が一巡り過ぎて2年生になりました。クラスは赤司君とも別になり、今度こそ平和な一年を過ごせそうな気持ちがします。というかこんなにクラス数多いのに一緒になったのが奇跡に近かったのだけどね。
 ――さて、話を先程のメールの件に戻したいと思う。予め言っておくがメール相手は勿論涼太だ。こんな風に逐一私にメールしてくるのは涼太くらいしかいないし。
 メールの内容は二週間前にバスケ部に入部したことと、一軍に入ったので今度練習を見に来てほしいというものだった。……なんというか、早すぎやしないか?と思ったのは私だけだろうか。今まで涼太がバスケをしている所なんて見たことがなったから恐らくは素人の状態で入部したのだろうと思う。それにも関わらずあの圧倒的な人数を誇るバスケ部の一軍にたった二週間で昇格したのだ、相変わらず恐ろしい程の才能だなと舌を巻いてしまった。がその反面、納得している自分もいる。私自身がこの世界がバスケととても深い関係を持っていることを知っているからだ。
 そもそもあのチートみたいな力をもっている幼馴染がバスケに興味を持たない訳がない。いつかは黒子君たちと共にバスケをするだろうということは予想していた。でも黒子のバスケって確か高校時代から始まるんじゃなかったっけ?うーん……分からないな。

「玲ちゃんっ、どうしたの?」

 携帯画面を見つめ考え込んでいた私に女の子独特の愛らしい声が掛けられる。声の主は声に負けぬ程の美貌を持った桃色の髪が特徴的な少女――さつきちゃんだ。可愛らしい笑顔で首を傾げてくるその姿に思わず私も笑みが零れてしまう。

「ううん、何でもない。あー次の授業移動だよね?」

 1年の選択授業でさつきちゃんから声を掛けてくれたことで始まった交友は同じクラスになったことで固いものとなった。最初はバスケ部のマネージャーをしていると聞いて引きかけたが彼女からはバスケ部の話を聞くくらいで特に何もないし、寧ろ今は彼女に同情をしているくらいだ。
 ……この学校で憧れの対象であるレギュラー陣とよく関わるせいか、さつきちゃんは他の女子からやっかみを受けることが多い。おまけに容姿も相成って凄まじい嫉妬を受けるという訳。僻むくらいならマネージャーになるかさっさと告白しろよ、という感じなのだがそうもいかないのが女子なんだよね。……本当女って怖いわ。
 帝光ではまだそんなに目立って噂されていない(と思う)が私自身も小学生の頃から幼馴染のことで散々女の恐ろしさを味わっている。正直に言うとさつきちゃんに投げかけてくる理不尽な言い分に腹が立って私が言い返したことも仲良くなった要因なのかもしれない。今では学園生活のほとんどの時間を彼女と過ごしているくらいだ。
 ……あ、言っておくが私はさつきちゃんを僻んだりはしていない。僻んだり妬んだりするのは馬鹿みたいだし考えるだけ疲れる。何より私は可愛い女の子が好きだ。見ているだけで眼福だし、幸せになる。つまり可愛い女の子は正義!という訳。

「玲ちゃんはやくー!」
「はいはい、今行くよ」

 小走りに出て行くさつきちゃんの後ろをいつものようにゆっくりと付いて行く。態々私の所まで戻ってきて嬉しそうに腕に抱き着いてくる女の子らしい所がきっと男子に受けるんだろうなーと思いながら、さつきちゃんが話してくれる話に相槌を打っていた。女の子って本当話のネタが尽きないよね……ってこれ以上言ったら私余計オバサンみたいに見えてくるから止めよう。

「あ、さつきちゃんに聞こうと思ったんだけどさ」
「玲ちゃんからなんて珍しいね!どうしたのー?」
「一軍の練習中ってどのくらい観客いるのかなって気になって」

 ピタリと足を止めたさつきちゃんに腕を引っ張られる形で私も立ち止まる。突然俯いて震える始めた姿に驚いて、どうしようと困っていたら普段では想像できないくらいの力で強く手を握りしめられた。

「もしかしてきーちゃんの練習見に行くの?!やっぱり幼馴染だから気になっ……」
「うわあああああああ、さ、さ、さつきちゃんちょっとストップ!!」

 熱の籠った興奮した口調で捲し立てるさつきちゃんに私も反射的に叫んで彼女の口を押えていた。きーちゃんって誰だよなんてツッコまずとも誰を指しているか何てすぐ分かる辺り自分が怖い。言いたいことは沢山あったけど焦りと急激に火照り始めた身体のせいで口がパクパクと金魚のようになってしまい言うことが出来なかった。

「私の情報収集能力を舐めちゃ駄目だよー」

 玲ちゃんのことだって知ってるんだから!とウインクしてくる彼女に頼むから誰にも言わないでくれと泣き付けば、変な笑顔を浮かべて視線を泳がせてくる。まさかと思い睨みつけたら急に逃げ出したので目的の教室に着くまで全力疾走で鬼ごっこをすることになってしまった。
 ごめん涼太、やっぱり練習いけそうにないわ……。バスケ部怖い。

2012/08/22

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