小学生かよ



 デカっ、黒っ、青っ、これが奴に会って一発目の印象だった。

「へえ、こいつがテツのことが分かるっていう……」
「はい。白村玲さんです」

 只でさえデカくて怖いのに上からまじまじと見下ろしくてくる視線。引け腰で会釈をすればどーも、なんてダルそうな声で返された。な、なんか馬が合わない感ヒシヒシ感じるんだけど大丈夫かこれ……。
 ――黒子君との例の約束から暫くして、突然放課後に現れたかと思ったら気が付いたら練習をしているらしい公園に連行されていた。んでこの青い奴こと青峰君と対面したっていう訳。正直約束忘れかけてたから吃驚したくらいだ。
 以前晴れて一軍に入ったと黒子君から聞いていたのだが、どう見ても青峰君だって一軍メンバーにしか見えない。見た目もそうだが何かこう……オーラみたいなもの?を感じるのだ。そんな2人の練習に来てる辺り明らかに私の邪魔じゃね?とか思って黒子君を見たら「大丈夫ですよ」なんてにっこり笑っている。いや全然大丈夫じゃねーよ。

「あーえっと何だっけ?しろ、しら?……あーめんどくせえな。おい、しまむら」
「はあ?!しまむらじゃねーわ、しろむらだよ!」

 小学生の頃から弄られている名前にイラっと来て初対面にも関わらず、ほぼ反射的にツッコんだのがいけなかった。……ヤベ、と口を押えた私に青峰君がニヤァとそれはもう楽しそうな意地の悪いを浮かべる。まるで弄るネタ見つけちゃいましたー、とでも言うような顔でだ。
ドッと出てくる冷や汗と一緒にこのまま逃げてしまおうかと考えていたらグリグリと青峰君に手で頭を押し付けられた。(撫でられたのかこれ?)なんか今までになかったタイプの人間のせいか対処の仕方が今一分からないが分かったことがある。……コイツ凄くムカつく……!!っていうことだ。

「青峰君、あんまり白村さんを虐めないでください」

 ド突いてやろうかと利き手をグーにした辺りで黒子君が頭の上から手を取ってくれる。「ルールとか気にしなくていいので白村さんは好きに遊んでください」なんて言われボールを渡されてしまった。どうしよう、なんて柄にもなく困っていたら「早くしろよ、し・ま・む・ら」なんてあの青いのが言ってくるからムカついてボールを奴目掛けて投げたら「ドッチボールじゃねえんだよ!」って頭にチョップされた。く、くそこれ以上背が伸びなかったらどうするんだよおおおお!!

 ――そんなこんなでアホなやり取りをしながらやったバスケだったけど、思っていたよりもずっと楽しかった。よく分からずにだけどパスしたりゴールしたり、下手糞なのに楽しそうに付き合ってくれる2人が上手いお陰なのだろう、体育でやった時よりも何倍も楽しく感じる。
 ただ、ゴールが上手くいかなくて後ろにいた黒子君にパスを回したら2人が凄く驚いた顔をしていたのが気になったけどね。

「白村さんっ」

 パスされたボールを受け取りゴールポストを見る。うう、やっぱり高い。まぐれで何度かは入ったけどこれ届くのかな。なんて思っていたら……身体が宙に浮いていた。
 吃驚して後ろを振り向けば青峰君が私を抱き上げていて、そのまま入れろ。なんて言ってくる。高くて遠くにあったゴールが今は目の前にあって何だか不思議な気持ちになりながらボールを入れれば、地面にボールが落ちた音がする。こ、これがバスケットボールプレイヤーの視界か!なんて感動していたら、思っていたよりもゆっくりと下へ降ろしてもらえた。

「今のがダンクシュートする時の景色。結構高いだろ?」
「うん、凄かった!あんなに高いんだねっ」

 思わず興奮気味に答えれば、だろ?と満面の笑み。真っ直ぐで純粋なその笑顔に気が付いたら釣られて私も笑顔になっていた。

「……なんか凄くムカつきますね」

 そんな不貞腐れた様な声が聞こえたのと同時に聞こえてくる悲鳴。いつの間にやら青峰君の後ろにいたらしい黒子君が彼の足を蹴ったのだ。蹲って悶絶する青峰君をよそに「もういい時間ですしそろそろ帰りましょう」なんて言ってきた。こ、この子中々黒いぞ……。
 ――それからというものの3人でバスケをするようになったのは、又別の話になる。……そしてそれは私と青峰君、否アホ峰との仁義なき“しまむら戦争”勃発の幕開けでもあったのだ。……まあその話は気が向いた時にでもしたいと思う。
 
2012/08/16

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