天然?それとも確信犯?



 此方の世界に来て約十数年、漸く自分がきた世界が判明しました。わーい。

「絶対バスケ部には関わらねえ……!!」
「え?」
「あ、ううん。なんでもないよ」

 あはははーと笑い誤魔化せば目の前にいる黒子君はそうですか、と頷き好物らしいマジバのバニラシェイクを飲み始めた。黒子君のそのスルースキル凄く有難いんだけど本当……ど、どうしてこうなったああああ!!
 いや、これでも努力はした。それはもう力の限り。これ以上黒子君と関わらない方が良いと(相手が不快な気持ちにならない程度に)避けていたのに委員会がある度に気が付けば彼が隣にいて、気が付けば週当番のペアになったり、気が付けば……以下略。
今日も当番の週だったのでお勧めの本を互いに紹介したり、勉強したりしてたら何やかんやで一緒に帰ることになったのだ。しかもマジバのクーポンがあるから行きましょうと引きずられて現在に至る、という訳。

「黒子君って何気強引だよね……」

 なんかどっかの黄色い犬を思い出すわ、とか思いながら彼を見れば「そうですか?」なんてしらばっくれた顔してくるもんだから一気に脱力してしまった。まあ、こっちに来てから私に拒否権なんて無いんですけどね……。段々慣れてきている自分が怖いよ。

「――そういえばこの前先生から呼び出されてましたけど、どうしたんですか?」
「えっ、何で知ってるの?」
「赤司君から聞きました」

 赤司君って誰?なんて思いながら、私はつい3日ほど前担任に呼び出されたことを回想する。そういえばあの時は凄い焦ったなー。
やけに深刻そうな顔をする担任にガクブルしながら尋ねれば、開口一番にこう言われたのだ。

「んー、よく分からないけど人少ないから生徒会入れとか言われてさ」
「それってもう強制じゃないですか」
「そうなの。そうなんだよ!!」
「白村さん落ち着いて。あ、そろそろ出ましょうか」

 時計を見れば中々の良い時間。やば金ロー録画してない。早く帰らないと。残ったシェイクを飲みながら自然と早足になった私の腕を黒子君がいきなり掴んできて、思わず転びそうになる。な、何事……?と吹き出しかけた口の周りのシェイクを拭い彼を見れば真顔で(いや、いつもそうなんだけど)じっと見つめてくる黒子君。
 いつもより凄み?がある彼に内心ビビッていると「委員会、やめませんよね?」なんて聞かれた。……は?え?
 吃驚しすぎて拍子抜けしたのか私の口からは「あ、はい」なんて情けない言葉が零れていた。途端にぱああと明るくなった黒子君にまたキュンとかしながら、流石に仕事放棄はしいないよと答える。というか、何だったんだ今の。

「その言葉を聞いて安心しました。……じゃあ名残惜しいですけどこれで」
「あれ、通学路こっちだったっけ?」
「いえ。最近この近くの公園で友人とバスケしてるんです。あ、そうだ良かったら白村さんもどうですか?」
 
 再び掴まれた腕に勢いよく首を振れば遠慮せずになんてぐいぐい引っ張ってくるので私も精一杯踏ん張り横断歩道前で謎の攻防戦を繰り広げる。きょ、今日はダメなんだ。今日の金ローはトトロなんだよ!!私の白トトロを見ないといけないんだ!!

「こ、今度!今度一緒にやろう!!」
「今度……。絶対、ですよ?」

 じと目で確認してくる彼にそれはもう力一杯頷けば漸く手が離された。……って、もしかして私今凄いこと言っちゃった?
 うおおおお……っと頭を抱える私を後目にじゃあ今度一緒にやりましょうね!なんて凄い良い笑顔で去って行った黒子君。あの、私バスケとか体育でやったぐらいで全くルール知らないんだけど。というか、なによりもさ、

 黒子君って訳が分からねえ……。

2012/08/14

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