夏戦争 | ナノ




 後頭部を殴られた様な衝撃が走った。目の前はパステルカラーの大空に浮かぶ真っ白な雲達とそこを気持ち良さそうに飛び回る数えきれないほどのアバター達。視線を下ろし自身の手を見れば、そこには精巧に出来た両手のテクスチャ。――これでもうお分かり頂けだろうか。……そう、どうやら私はOZの世界に入りしかも自分のアバターである“レイカ”になってしまったらしい。何故こうなってしまったのか、それは良くは分からない。只どうやっても今はここから出られない事が漠然と分かっていた。

「どうしたものかなー…」

 うーんと唸りながら腕を組めば周りからざわざわと騒ぐアバター達の声が聞こえる。視線をそこに向ければ吹き出しから「クイーン・レイカがいるぞ!」「声掛けるか?」と言った一連のやり取りが見えたので取り敢えず今の私はログインした状態なのか、と把握する。……それにしても主観で見るOZの世界ってちょっと目に痛いかも。
 今の状態で話しかけられるのもややこしい事になりそうなのでそそくさとその場を去り、いつも利用しているプライベート用のコミュニティルームへと向かった。誰もいない事に安心しつつレイアウトしておいたソファーに座り溜息をつくと、不意に後ろから抱きつかれる。うわっ、と声を上げ見上げればそこにはいつもこの世界で会う彼――キング・カズマが立っていた。

「ちょっ、どうしたのいきなり……っ」

 普段なら絶対して来ない行為に私は柄にも無く焦り、必死に声を掛けるが彼は一向に喋ろうとしない。抱き上げられカズマもソファーに座ると膝に乗せられ向き合う様な形で抱きかかえられる。嬉しそうに私を抱きかかえる彼が頬ずりをしてくるので、私もその兎特有のモフモフとした毛並みに思わず目を細めてしまう。(この際ここにいる私に感覚が合った事とか質感とかは無視した)

「もしかして今オートモード?………まだ佳主馬くん、ログインしていないの?」

 誘惑を振り切り尋ねれば、キングの大きな赤い目が瞬いてコクリと頷かれる。漸く納得し私が微妙な顔をしていたのだろう、不思議そうに首を傾げたキングに顔を覗かれたかと思えば優しく頭を撫でられた。吃驚しながらもその優しい手つきと毛並みの気持ち良さに私もキングに抱きつき顔を埋めれば自然と眠気が襲って来る。うとうととしながら彼の羽織るジャケットの裾を握り、そこで意識を手放してしまった。

「――玲華さん、玲華さん。……って起きないし」

 軽く肩を揺らしても起きない玲華に佳主馬は溜息をついた。約束していたのにいつまで経っても納戸に来ない玲華を迎えに部屋へ来てみれば、パソコンが置かれたテーブルの上で突っ伏し気持ち良く眠る彼女がいたのだ。先程から何度も起こしているのが一向に起きる気配がない……というか反応の無い彼女の様子に本当にこの人寝ているのか?と思わず佳主馬は疑問に思ってしまう。

「いい加減起きてよ。……玲華」

 恐る恐る彼女の頭に置かれた佳主馬の手が彼女の髪を撫でる。さらさらと梳ける彼女の髪に少し緊張しながらも、その柔らかい髪を彼が指でクルクルと弄れば少しくすぐったそうな表情を浮かべる彼女の顔に自然と佳主馬の頬も緩まっていた。


―――
最初の夢がキングってどういうこと^p^←
取りあえず何が書きたかったか解説すると、佳主馬のアバターであるキングにも彼の意思がこもっているから玲華さんというかキングもレイカが好き。
好きだから彼が彼女(=レイカ)にしたい事(例えば手を繋ぎたいとかの欲望)を無意識かにやってしまうみたいな。うーん説明し辛い(笑)

本人達がログアウトしている時にアバター同士でお話しているっていう設定も凄く美味しいと思います^p^うへへ

2010/09/02

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