夏戦争 | ナノ



回らない思考回路


 新幹線から降りて電車、バスと乗り継ぎ辿り着いた場所は町から少し離れた小山の麓だった。ジリジリと容赦無く照りつける太陽に玲華と健二は汗を拭いながら石垣のある坂道を歩く。此処に来る間に夏希の親族である人物達と合流し、あれよあれよという間に3人から10人以上の大所帯になっていた。お客?である玲華と健二に親戚御一行も友好的に接してくれたので一応は歓迎されている様だ。その様子に玲華達親戚コンビもほっと胸を撫で下ろす。

「それにしても健二に対するあの態度、何か怪しいよねえ」

 世間話をしながら歩く前の御一行を見ながら投げかけられた問いに健二も頷いた。――彼が新幹線の件を玲華から直接内容は聞くことは出来なかったが、どうやら機嫌は直ったらしい。今まで見た事の無い玲華の様子に不安を覚えていただけにいつも通りの彼女に戻ってくれて良かったと健二は心から思った。
 自分もキャリーバックやら鞄やら多くの物を持っているのに玲華は健二が運んでいる大量の荷物を夏希には内緒で少しだけ持ってくれる。優しい又従兄弟の笑顔を見ながら健二も自然と笑顔が浮かんでいた。

「玲華が一緒で良かったよ。ボク1人だったらこんな大所帯の所行けなかったかも……」
「まーたそんな事言っちゃって。私がいなくても夏希の為ならって頑張ろうとしてたじゃん」

 ほら最初に頑張って手上げてさ、と紙袋を持った手をピンっと上げる玲華に折角頑張って言ったのに……と口ごもりながら健二は項垂れる。――昔からお互いに両親が多忙な為夕飯を一緒に食べたりと何かと親交の深い玲華は健二にとって夏希とはまた別の、とても大切な異性であった。両親が不仲になり辛かった時期にも何も言わず家に迎え入れてくれた時は言葉には表せないほど助けられたし、消極的な自分を積極的に引っ張って行ってくれるのもいつも玲華だった。そんな学校でも夏希に並ぶ人気を誇る玲華と親族同士である事は健二にとっても誇らしく感じる。が、同時にそれがコンプレックスでもあった。

「ほらもう直ぐだから頑張ろう、健二」

 そう言って笑うと彼の手を掴み引っ張って行く玲華。自身の手と繋がれた玲華の柔らかい手に神経が集中してしまい熱くなる体温と回らない思考回路にあたふたとしつつ、健二は手を握り返し玲華の背中を見つめる。
 次第に坂道だった地面が平らになり2人が見上げれば、瓦屋根の荘厳な門が構えていた。歴史を感じる立派な門に思わず健二が息を呑むが玲華はというとそんなに驚いている様子はなく至って極普通の顔をしている。彼女の反応に驚きつつ2人は親戚御一行組の後を追い、門をくぐり抜けた。

2010/08/20

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