最近エルフィは1人、本を読んでいることが多い。しかも顔をしかませて食い入る様にだ。本はカバーをしているので何を読んでいるのかは僕には分からない。
「エルフィ」 「?!な、何スザク?」
僕の顔を見ると慌てて本を閉じた。……怪しい。
「何読んでるの?」 「ちょっとね……」
気まずそうに僕と目を合わすまいとするエルフィ。
「じゃ、じゃあ、私は用事があるから!」
そう言ってエルフィ は何かと理由を付けて僕から離れようとすることが最近凄く多い。……僕、何かエルフィを怒らせるようなことしたかな。
***
「今日はこれで終わりだ」
先生の話が終わると同時に授業終了の合図の鐘がなった。エルフィに話しかけようと後ろを向くと彼女の姿がない。
「ねぇルルーシュ、お願いがあるんだけど……。今日空いてる?」
隣から聞こえてきた声に視線を向ければ、手を合わせルルーシュに何か頼みごとをしているエルフィの姿があった。
「あぁ、構わないよ」
表情は見えないが、心なしかルルーシュの声色が柔らかい。エルフィもルルーシュの了承に嬉しそうに笑っている。普段見せないような柔らかい幼げな笑顔だった 2人の姿に何故だか胸がチクチクと痛んだ。……第一、監視者であるエルフィ がルルーシュと2人っきりになって言い訳がない!! ルルーシュもエルフィを気に掛けているようだし……、とか考えている間にいつの間にか2人は消えていた。 だー、もー!!何やってるんだ僕は!!
***
数日後、ラウンズ専用の執務室にいると、こちらに向かってくるヒールのテンポ良い足音が聞こえてくる。誰かなとか考えているとタイミング良く扉が開いた。
「スザク、やっと見つけた!」 「エルフィ、」
扉の向こうに嬉しそうに笑うエルフィがいた。手には蓋をしているせいで見えないけど、お盆を持っている。
「どうしたんだい?」 「スザクに食べてもらいたい物があって」
頑張ったんだからと笑うエルフィに目の前の机には書類から何か載せた大きなお盆に変わった。
「はいっ!」
蓋を開けた中には、お膳に綺麗に盛られた日本食だった。――煮物や焼き魚、お吸い物の香り。日本がエリア11になってから見る機会が無かった食事に自然と唾を飲み込んでいた。
「これ、エルフィが全部……?」 「えぇ。ルルーシュに料理を教えてもらうことは出来たんだけど、食器と食材を集めるのか大変で、時間掛かっちゃった」
ルルーシュと会っていたのは僕のためだったのかと分かり何故だか安堵する。エルフィ にお礼を言い、おかずに口を付けた。
「すっごく、美味しいよ!」
自然に零れた感想にエルフィはほっとしたように頬を染めてはにかむ。
「あ、言うの忘れてた……。スザク、お誕生日おめでとう!」
はいっと渡されたバースディカードを見ると、“すざく、おたんじょうび おめでとう!!”と日本語で書かれていた。少し歪んだ文字に笑みが零れる。
「スザク、これ食べたらジノ達がケーキ用意して待ってるから一緒に行こう!」
――今年の誕生日は僕にとって忘れられない、大切な日になりました。
祝福の日 (スザク、食べきれなかったら残して良いからね?) (エルフィが折角作ってくれたのにそんな事出来ないよ!) (だって……、ジノのが張り切りすぎて3〜4メートル近くのケーキを注文したらしくて……) (えぇっ?!)
――― かなり遅くなりましたが、書き上げられて満足です! 多分日本食ってなかなか食べれないだろうなって思ったのがこのネタのきっかけです。
ともあれ、スザク誕生日おめでとう!!
2008/08/24
|