――琥珀色の紅茶に、白いミルクを注ぐ。混ざり合ったマーブル模様と薫り高いその匂いに私は息を吐いた。 ――天気の良い日に庭で午後のティータイム。これを至福の時という言葉以外に、何が当てはまるだろうか。少なくても私は考えられない。 カップを手にとって、紅茶に口を付けた。自然と笑みが零れる。
「嬉しそうだな、エルフィ」 「ジノ」
何時の間に?と聞くと今さっきとはにかみながら答えてくれた。私はジノを向かいの席にと促す。
「ジノが休みの日に、私の屋敷に来るなんて珍しいわね。どうしたの?」
空のカップに紅茶を注ぎ、ジノに渡す。……流石貴族とだけあって、紅茶を飲む姿はとても優雅。(ジノには失礼だけどね)
「明日からエリア11の方に行くだろ?だから会っておこうと思ってさ」
笑いながら彼はそう言うと立ち上がり、私の手を取って色とりどりの花が咲く、御花畑の方へ私を引っ張って行った。
***
心地良い日差しに当たっているせいか、眠くなってくる。ジノもそうなのか、私の膝に頭を乗せ眠そうな顔をしていた。寝ても良いよ?と彼の頭を撫でると、無言で首を横に振ってくる。そのまま私の腰に腕を回して、お腹に顔をくっつけてくきた。それが少しくすぐったくて、笑うと嬉しそうに此方を見上げる。 彼がこういう事をしてくるのは構って欲しかったり、甘えたい時だって分かってるから、その時は私は彼を思いっきり甘やかす。――ヴァインベルグ家の人間としてジノも苦労している。もっとも、普段彼はそんな様子を見せる素振りは全くしないけど。 その彼が私にだけ甘えて来るという事がなんだかすごく嬉しいから。
「……こんな穏やかな日が続けば良いんだけどな」
お腹に顔をくっつけたまま、呟くようにジノが言った。
「……そうね。人が傷つくのは辛いもの」 「……」 「ジノ……?」
聞こえてきた寝息に視線を下に向けると、幸せそうに眠るジノの顔。思わず笑ってしまった。
(……私はもう誰も失いたくない。だから……)
空を見上げれば、青く澄んだ空。その美しさに涙が零れそうになった。
Serene (神様、私に皆を守る力を。私に……彼を守る力を )
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