Defective goddess
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「おかえり、僕のシルビア」 「おかえり……?」 「そうだよ。ここは、君の父――イオリア・シュヘンベルグが眠っていた場所だったから」 「どういうこと、私はそんな事聞いてない! それに「眠っていた」なんて……」 「僕も其処までは知らないよ。……眠っていたというのは、この通り」 リボンズが一歩後ろに下がり、正面にあるカプセルを見せる。 銃で撃たれたのかヒビの入ったカプセルを私は覗き込んだ。 「お父、様っ……!!」 何百年も前に会って以来、見る事の出来なかった「私達」にとって誰よりも大切な人。……今は額に血を流し、痛々しい様子で眠っていた。 カプセルのひび割れたガラスを撫でる。……悲しみよりも先に、憎しみが走った。 「お前が……、お前がお父様を殺したのか!!」 振り返りリボンズに向かって一発、銃を撃つ。弾丸は当たること無く、彼の横を通り過ぎた。 「……君が傷付く事を僕がするわけ無いでしょう?」 彼は心外だな。と呟きながら肩をすくめた。 「イオリア・シュヘンベルグを殺したのは、あの愚か者のアレハンドロ・コーナーだよ」 「あの人が……?!何処に居るの、アイツは……!!」 「……もう死んだよ。刹那・F・セイエイの手によってね」 「刹那に……」 「まぁ彼も、他のマイスターズも今頃はあの世に行ってしまってると思うよ。……僕はシルビアさえ居てくれば、こんな組織どうでも良いんだけどね」 そう言うと彼は何かのボタンを押す。――途端に体が何かに支配された様にズルズルと私は地面に座り込んでしまった。 「何を……?!」 「ちょっと、大人しくしてもらうためにね。言ったでしょ、君を傷付ける事はしたくないからね」 「何が目的なの……っ?」 「統一された世界を僕が支配する。……そして、「第二のヴェーダ」であるシルビアを手に入れる。そうすれば全ては僕の物だ」 (そんな事……っ、) ――ヴェーダが、私の力が使われるくらいなら、私は……。 (自ら命を絶ち、「新しいシルビア」に「意思」を受け継ぎたい) ――生きているのか、死んでいるのか……。 ……リヒティの声。 ――お願い、世界を……変えて……!! ……クリスの声。 皆泣いて、 皆傷ついた。 ……どうして人間はこんなにも醜くて、 美しいものなのだろうか。 涙が頬を伝う。 ――おいで、シルビア。 (お父様……?) 不意に力が抜けて、眠くなる。 (これで私の役目は、「責任」は終わったのですね、お父様……?) 手に持っていた銃が滑り落ちた。 |
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