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カトレア

88 禁断の技




 ――試合が開始早々に放たれた佐久間君の必殺技、皇帝ペンギン1号にアタシ達は先制点を奪われた。しかしそれよりも佐久間君の様子にアタシ達は動揺をする。
 倒れこんだ佐久間君の姿に皆が鬼道君へ問いかければ、あの技は……影山が考案した禁断の技らしい。強力な威力の為に3回打てば体が壊れてしまうという、謂わば諸刃の剣と言うべき技だと言っていた。
 そこで試合の司令塔である鬼道君から、佐久間君にシュートを打たせない様にしろという指示が出される。それに皆が同意し、試合が再開された。

「思い出せ、これが本当の皇帝ペンギンだ!!」

 鬼道君はドリブルで相手陣へ切り込み、指笛を吹く体制に入る。一之瀬君とアタシをフォーメーションに入り、駆け上がった。

「皇帝ペンギン「「2号!!」」

 一之瀬君とアタシが左右同時に蹴り上げ、ボールはゴールへと向かっていく。が、源田君は新たな必殺技ビースト・ファングを繰り出して止めて見せた。だが、直ぐに源田君は声を上げて蹲る。……源田君の様子に鬼道君へ皆が視線を向ければ悔しそうに彼は頷いた。
 ……皇帝ペンギン1号と共に禁断の技であるビースト・ファングをこれ以上打たせる訳にはいかない。だがそれはアタシ達もシュートを打ってはいけないと言う事。
 彼らを守る為にもそうしなければいけない事は分かっている。だけどそれでは勝つことは出来ない。少しずつチームの連携も崩れていく。
 不動がボールを持ち、駆け上がって来るのを見てアタシはゴール前へ立ちふさがった。勿論それは……皇帝ペンギン1号のダメージが抜けきれない守を守るためだ。

「レッド・スプライト!!」

 シュートされたボールを守の元へ行く前に打ち落とし、そこで前半が終了した。睨んでくる不動を睨み返して、アタシはしゃがみ込む守に手を差し伸べる。

「サンキュー飛鳥、助かったぜ」
「どういたしまして」

 掴んで来た手を引っ張り、守を立ち上がらせた。そのまま2人でベンチに向かえば、皆が後半の試合をどう進めて行こうか揉めている。試合を中止した方が良いという意見に瞳子監督が語調を荒げてその意見を突っぱねた。
 監督の意見に鬼道君が頷き、攻撃型のフォーメーションに戻すことになった。それでも何処か不安げな様子の鬼道君にアタシはそっと彼の手を握り、笑みを向ける。

「大丈夫だよ、鬼道君。アタシも……アタシ達も協力するから」

 そうだよね?と皆に視線を向ければ1番に吹雪君が得意げに頷いてくれた。それから染岡、一之瀬君と頷き、今度は皆が力強く頷いてくれる。
 皆の表情に鬼道君も安心した様に口角を上げ、頷いてくれた。


―――
ビースト・ファングを変換すると、どうしても最初に“ビースト・ファン具”になるんだが。
どういうこったい。

2009/11/23


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