イナズマ | ナノ

カトレア

80 スピカ




 始まった後半戦は吹雪君も積極的に相手陣へと切り込み、果敢にシュートを打って行く。しかし相手もそこは抜かりなく、GKとDFそれぞれが見事にシュートを防いで見せた。
 それにムキになった吹雪君は以前の練習試合の様に、ワンマンプレーをし始める。その様子に染岡が食って掛るも吹雪君は中々聞き入れようとはしなかった。
 そしてボールを回す際に出す宇宙人の癖を見つけた一之瀬君がボールをカットする事に成功し、再びボールは吹雪君へと回った。アタシも2人に続き相手陣へと走り出す。

「行けっ、飛鳥、染岡!!」

 吹雪君は相手DF陣を自分に引き付け、ゴールギリギリで染岡にパスを回した。突然回って来たボールに染岡は驚きつつも、しっかりとボールを受け取る。アタシは染岡はアイコンタクトを取ると足に力を込め、上空へ飛び上がった。

「行けーっ!!」

 染岡の放ったシュートは今までとは違う大きな飛竜の形をしていて、アタシはその力強い姿に驚きつつもサンダー・トルネードを打ち落とす。雷を纏った巨大な飛竜はGKを破り、ゴールへと飛翔した。
 遂にエイリア学園から1点をもぎ取った事で、アタシ達は喜びの声を上げる。染岡が嬉しそうにアタシの肩を掴むと、その周りに皆が集まって来た。
 そしてメガネから染岡の新たなシュートを“ワイバーン・クラッシュ”、そしてアタシとの連携技を“ワイバーン・トルネード”と勝手に名付ける。(……そのまんまだね)

 ――試合が再開され1点を取られた事がレーゼは許せなかった様で、ボールを奪うとFWであるディアムとの連携技、ユニバース・ブラストを放った。しかし、先程話した守と塔子ちゃん、壁山の三重技でその強力なシュートを見事に防いで見せる。
 そしてボールを回された染岡から吹雪君へパスが回され、彼の必殺技エターナル・ブリザードが2点目を決めた。そのまま試合は終了し、今度こそ雷門イレブンの勝利が決まった。


***


「お前達は知らないんだっ、……本当のエイリア学園の恐ろしさを、」

 勝利に喜ぶアタシ達にレーゼは震えた声で呟いた。先程とは全く違うその様子にアタシ達は眉を寄せ、彼を見る。

「我々はセカンドランクに過ぎない、我々の力など、イプシロンに比べれば……っ」

 そう彼が言った瞬間、黒い霧の様なものが立ち込めて来た。禍々しいその雰囲気にアタシは鳥肌が立つ。……それに何故だかズキズキと頭痛が襲って来た。まるで此処に居たくない、居てはいけない。そう体が、本能的に訴えてくる様だった。

「無様だぞ、レーゼ」

 何処からともなく声が聞こえ、上から眩しいくらいの強烈な光が発光する。その光に視線を向ければ、そこには赤い服を纏った集団が居た。……彼らがレーゼの言う“イプシロン”なのだろうか。どうやらサッカーボールを持った黒い服を纏った彼がキャプテンなのだろう、覚悟は出来ているか?そう男がレーゼに問えば恐怖に満ちた表情で彼は顔を歪めた。

「負けた事もそうだが、……御三方は大変お怒りになられているぞ」
「何故ですかっ……まさかデザーム様、このチームにあの方が?!」

 男の言葉を聞いた瞬間、レーゼは血走った眼でアタシ達に視線を向ける。何度か視線を移し、アタシと目が合うと彼は驚愕した表情で目を見開いた。(その視線に皆は気が付いて無かった)

「あぁ、このチームにはあの方……“スピカ”様がおられる。あの方を傷付けた時点で、お前達の追放は決定されていた」
「そ、そんな……っ、しかし私達はあの方と御顔を合わせる事さえ許されていなかった「言い訳は無用だ」

 必死に弁解するレーゼに男……デザームという男は容赦無く切り捨てると、ボールを握る。その様子にレーゼは力が抜けた様に地に伏した。
 その姿を一瞥し、男はボールを蹴り落とす。ボールは一直線にジェミニストームに向かうと再び光を放ち、彼らを呑み込んだ。消えてしまった彼らにアタシ達は声を洩らした。

「我らはエイリア学園ファーストランクチーム、イプシロン」

 デザームの声にアタシは彼を睨みつけた。……が、彼はアタシを見た途端、アタシしか気付かない位に小さく目配せをしてくる。その姿にアタシは疑問を覚えれば、強烈な痛みがアタシの頭を遅い、思わず蹲ってしまった。

「飛鳥さんっ?!」

 吹雪君が心配する様にしゃがみ込むとアタシの背中を擦ってくれる。ありがとう、と小さく呟き力無く笑えば、イプシロンは消えてしまった。


―――
名前決めるのに1週間近く悩んだ(笑)

2009/11/11


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