イナズマ | ナノ

カトレア

65 可愛い妹




 試合が終わった後、修也とアタシはメンバーから離れ病院へ向かっていた。勿論それは、夕香ちゃんに優勝を報告する為。(途中でお花も買ったし、準備万端だ)
 病室に入ると、夕香ちゃんは変わらず静かに眠っている。

「夕香ちゃん、お久しぶり」

 中々会いに来れなくてごめんね。とアタシは夕香ちゃんの頭を撫でた。修也もアタシの隣に立ち、夕香ちゃんに微笑んだ。

「夕香、……俺達、勝ったよ」

 夕香ちゃんに掛ける修也の声はとても優しくて、アタシも笑みを零す。暫く2人っきりにさせてあげようとアタシは修也から花を受け取って、花瓶に入れようと後ろを向いた。
 棚に置いてあった一輪ざしの花瓶を手にしたその時、不意に小さな声が聞える。

「お兄ちゃん……お姉ちゃん、」

「っ……?!」

 声の元に振り返れば、そこには此方に微笑む夕香ちゃんの笑顔があった。修也が思わず立ちあがったせいで椅子が転がる。
 アタシも驚きの余り花瓶を落として、夕香ちゃんの元へ走り寄った。

「夕香……っ、」

 修也が夕香ちゃんの頭を撫でれば、彼女の瞳から涙が零れる。修也の頬からも涙が伝っていた。


***


「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、同じチームになったんだね!」

 意識を取り戻した夕香ちゃんは昔と変わらず、元気な明るい子のままだった。
 アタシと修也は今までの事を話しあげると、夕香ちゃんは嬉しそうに聞いてくれる。

「お姉ちゃんね、夕香ちゃんがくれたお守りのお陰で頑張れたんだよ」

 有難う。と首に掛けられたペンダントを見せると、凄く喜んでくれた。(良かった、元気だしてくれて)
 修也もよっぽど嬉しいのか、普段見せないニコニコとした笑顔で話していた。
 修也も俺もつけてるぞ、と言わんばかりの顔で夕香ちゃんにペンダントを見せる。(……デレデレだな)

「お兄ちゃんとお姉ちゃん、お揃いのペンダント付けてくれてたんだね!仲良しだー」

 改めてそう言われると何だかむず痒いものがあって、アタシ達は思わず顔を見合わせて苦笑してしまう。

「そうだね、修也とは仲良しだよ」
「あぁ、飛鳥とは仲良しだ」

 アタシ達がそう言うと、夕香ちゃんは不思議そうに首を傾げて修也を見た。(な、なんか凄い事言いそうな予感……)
 修也も何となくそう思ったのか、少し顔が引きつらせて、どうしたと夕香ちゃんに問う。

「お兄ちゃん、前にお姉ちゃんの事好きって言ってなかったっけ……?」

 夕香、お姉ちゃんが本当のお姉ちゃんになったら良いのにな!と笑顔で言って来たので、アタシ達は恥ずかしさやら何やらで、2人揃って椅子から転げ落ちてしまった。


―――
王道ですよね(笑)

2009/10/29


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