「へえ……アンタが第二の“雷鳥”の名を継ぐ者?」
小馬鹿にしたような口調で目の前に立つ少女を見つめ、少年は形の良い唇を引き上げにんまりと笑った。少し癖のついた灰色の髪を弄りながら細められた空色の瞳には訝しげに彼を見つめる少女の顔が映っている。 ――梅雨入りをしたばかりのこの季節、雨の日が多いせいか夜の河川敷は蒸し暑いことが多い。普段からここを夜の散歩と称して訪れることが日課になっていた少女もこの蒸し暑さには嫌気を感じることが多いかった。……だが、今日は違う。少年のその瞳を、その笑みを見た途端冷水を浴びた様に体が冷え切ってしまったのだ。
「貴方は誰……ですか?」
胃が冷たく重たい。彼の瞳から目を反らしてしまえばいい、そうは分かっていたのに反らすことが出来なかった。考えあぐね少女の喉から咄嗟に出てきたのは極ありきたりの質問。質問を質問で返すのは感心できないなーと薄く笑う少年の様子に少女は自身の喉がひりつく感覚がした。――耳が痛くなりそうな程の静寂に少年の楽しそうな小さな笑い声が響く。
「君面白いこと聞くね。僕のこと知らないなんて、それでよくもまあ“雷鳥”の名を継ぐなんて大それたこと言ったもんだ」
……女の子と間違われても可笑しくない程の色白な肌と整った美しい笑みが少女の目の前に広がった。突然のことに目を見開き固まる少女。彼女にもう一度笑みを向けた次の瞬間――少年の顔からあの美しい笑みは消えていた。
「愚かしくて笑いしか出ないよ。君みたいなフィフスセクターにさえ選ばれなかった人間が第2の“雷鳥”だって?はっ、冗談も大概にしてくれよ」 「何ですかっ、い……いきなり!!」
目の前の人物の肩を強く押し、彼女は声を張り上げる。少女の表情にも怒りの色がみえ、少年に対しての明らかな敵意が見えた。よろけながらも彼もまた少女を見つめる。その表情は冷たい……人形の様で、彼女は小さく息を呑んだ。
「……渡さない」 「な、なに……っ」
刃物の様な少女を突き刺す鋭い敵意。乱れた前髪から見えた獣の様な憎しみの籠った目は少女の恐怖を煽らせた。尋常ではない彼の様子に先程までの怒りも忘れ、思わず後ずさりしてしまう。少女にとってそれ程に少年の豹変は恐ろしかったのだ。
「渡さない、お前なんかに“雷鳥”の名は絶対に……渡さない!!それは僕が継ぐものだ、僕のものなんだ!!」
――― まあ、書くとしたらこんな感じですね。 完璧に1・2期(カトレア)を見ていないと分からない展開になりそう。 ……というか文章を書くのがウンヶ月振りで、なんかもう色々酷い。
2011/06/27
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