イナズマ | ナノ


 広大な中庭を抜け職員棟の奥、まるで人目から遠ざける様に設置された部屋。荘厳な木製の洋風な扉と“生徒会執行部・役員私室”と書かれた金色のプレート。最新式の建築スタイルを取り入れていた中等部とは違って、洋風の美しい建築様式を取り入れている高等部であるが――その部屋は周りとは違う近寄りがたい、格式高い雰囲気を出していた。
 そんな部屋の扉前で飛鳥はその雰囲気に圧され、中々中に入れないでいた。昼休みに生徒会メンバーの顔合わせをすると夏未に言われ急いで来たのだが静まり返った廊下に只一人、心細くて仕方がない飛鳥には珍しく躊躇を覚えていた。だが集合時間は後少し。……これは腹を括るしかないのか。そう飛鳥は諦めに近い考えに行きつくと生唾を飲み込み、拳を強く握りしめると目の前の扉にぎこちなくノックをしてノブに手を掛けた。

「……失礼します」

 恐る恐る扉から顔を出して部屋を覗き込むとそこは開けた広間が広がっていて、予想していたよりも広い部屋に驚きつつ飛鳥は足を踏み入れる。広間には座り心地の良さそうなソファーが設置され、大きなステンドグラスは太陽の光を浴びて美しく部屋の中を照らしていた。その幻想的な美しい光景に飛鳥は自然と顔が綻ぶ。
 先程までの緊張も解れ完全に気を抜いていた時――不意にこの広間に繋がっていると思われる別室からの扉が開き、飛鳥は驚きで思わず後ろに飛び退くとソファーにぶつかり、そのまま倒れこんでしまった。

「やあ、ようこそ生徒会へ……って、あれ、飛鳥じゃないか」
「えっ……お、お兄ちゃん?」

 満面の笑みで部屋に入って来た少年――基山ヒロトはソファーに倒れこんで居た大切な妹分である人物の登場に思わず驚きの表情を浮かべる。飛鳥もまさか此処に兄と慕っている彼が居るとは思わず、そして学校指定の制服とは違った白を基調とした綺麗な制服?に身を包んでいた彼に驚いていた。
 お互いに聞きたい事は沢山あったがヒロトは直ぐに飛鳥を助け起こすと乱れた彼女の髪の毛を軽く撫で素早く直す。その手際の良さに飛鳥はまた少し驚きながらお礼を言うと、ヒロトが出て来た部屋の方から彼と同じ白を基調とした制服(だが皆デザインは違っている)に身に纏った数名の生徒達が何事だとでも言う様な怪訝そうな表情で姿を現した。が直ぐにそれは驚きの表情に変わり、そして最後には笑顔に変わる。皆、雷門中で一緒だった飛鳥の知人、友人達だったのだ。
 久しぶりの再会に喜ぶ彼女達の後、最後に出て来た夏未の姿に飛鳥は小さく声を上げる。その声と彼女の姿を見て夏未は満足そうに笑うと、そこに居るメンバー全員の顔を見渡して口を開いた。

「漸くこれでメンバー全員が揃ったわね。……見れば分かる通り、これが今年度全生徒から選りすぐって私が決めさせて頂いた生徒会執行部のメンバーです。この生徒会は従来の雷門生徒会とは違い、今年度から組織システムを新しくした謂わば“新生生徒会”。大変だと思いますが、皆さんの働きを期待してます」

 そう言った夏未の目はとても力強く、この組織に力を入れている事がよく分かる。――それから説明をきいた所、夏未はこの生徒会には入らず“理事長代理”として生徒会を引っ張っていくらしく、彼女とは別に正当な“生徒会長”がいると言う事に飛鳥は内心驚いていた。てっきり、彼女が生徒会長になるものばかりだと思っていたからだ。夏未から会計、書記、と役員の紹介を聞きながら飛鳥は少し前に受け取った新しい制服に視線を向ける。――生徒数の多いこの学校で生徒会役員が分かり易い様に、生徒会の仕事をしている時は制服とは別に違う制服を着る事にしたらしい。飛鳥の生徒会制服は他の役員と同じ白を基調にしたもので、若干他の女子役員より派手な様な気がした。……やはりそこは副会長だからなのだろうか。と自己完結すると、ふと一つの疑問が浮かびあがった。――隣に居る彼、ヒロトの生徒会制服も他のメンバーと違い幾らか豪華なのだ。もしや、これは……そう飛鳥の中で答えが行きついた時、タイミング良く夏未がヒロトの名前を呼びあげる。

「基山君は生徒会長に任命しました。そして雷鳥さんは生徒会副会長。皆、二人に協力をお願いします」

 夏未の声に嬉しそうに笑みを向けてくるヒロトに飛鳥も安堵を覚え、笑みを返した。二人の様子に夏未も微笑み、そして悪戯っぽく笑いながらとヒロトと飛鳥の前に立つ。その笑みに言い知れぬ不安をヒロトと飛鳥が覚えたのは言うまでも無い。

「今日は本日から部活が始まると言う事で特別に終礼後、集会をする事になりました。集会では全部活の部長達からそれぞれの活動内容紹介をしてもらいます。……勿論、生徒会もその場で紹介をします。そこで御二人には生徒会を代表して演説をしてもらいますので、宜しくお願いしますね」

 清ました笑顔で言われた言葉に二人は反発の声も出す事が出来ず、予想外の展開に只目を見開くばかりだった。

 
我ら、生徒会執行部!
(お、お兄ちゃん……ど、ど、どうする?)
(……やるしか、無いんじゃないかな?)
(……ですよねー)
((はあ……、))




――――
続きを書いてというコメントを頂きましたので書きました!
まさかの兄妹コンビです、そしてこれから夏未ちゃんにコンビで振り回されます(笑)

制服が違うという設定にしたのは、やはりイナズマなので何処かしら中二病チックにしたかったからと、ビス子の趣味です。すみません(笑)

また気が向いた時に続きを書く……かもしれないです←←

2010/05/31

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