イナズマ | ナノ


※ノット雷鳥さん。ほんのり暴力表現注意!


「この世界で生き残る術は何か?まあ、私達にしたら叔父様も大きく関係するけどやっぱり……力よね。誰かを踏み台にして這い上がる卑怯で、残酷で、とても強い力。"弱肉強食"。所詮は動物と変わらないのよ、人間って。あー吐き気がする」

 高く結わいた髪を揺らし少女――スピカは口を開いた。年齢相応には見えない相手を凍死させそうな程に冷めきった瞳を目の前で怯えた表情で見上げてくる人物に向け、ただ口角を上げる。……整った顔立ちをしているだけに感情の何も籠らないその笑みはまるで人工的に作られた物の様な錯覚を少年に与え、更に恐怖を煽らせた。

「でもね私この気持ち悪い仕組み、結構気に入ってるんだ。だってそうしなかったら私みたいな女がこんなに上に行かないもの。可笑しいよね、嫌いなのにこれで私が……"私"の存在を必要としてくれてるんだから。ねえ、君はどう思ってるの?キャプテン君達に負けて、学園から追放されて、私みたいな奴に虐められて。これからどうやって生きるの?……あ、叔父様から見放されてどうする事も出来ないから私の虐められて役してるのか。あーそっかそっか御免ねえ、そこまで理解出来なかった!」

 無邪気に笑ったスピカは足元にあったボールを蹴った。軽く蹴られた様に思われたボールは一瞬で爆発的な威力を持ち少年に襲いかかる。容赦無く鳩尾に当てられ嗚咽を漏らしながら地面に伏す少年にスピカは近付いて彼の髪を掴み、無理矢理顔を上げさせた。苦痛の表情でスピカを見つめる目を彼女もジッと見つめる。その表情からは笑みは消えていた。

「……このままで良いの?ずっと苦しいままで」
「……ッ」
「嫌だよねえ?悔しいよねえ?私の事、憎いよねえ?……だったら、強くなりなよ。私に勝てるとかじゃなくて壊せる位の強さを」
「そんな事、出来ません……!!」
「出来る出来ないの問題じゃない。成るの。でないと面白くない。成らないのなら……このまま私が壊してあげようか?レーゼ、いや……緑川君?」

 見惚れて仕舞いそうな程美しい笑みから自分に向けられる刃の様な殺意。その恐怖に少年は支配される。……彼の瞳から零れた涙は、虚しく冷たい地面に零れ落ちた。


―――
リュウジ君を苛めたくなったのでスピカさんに代わりやってもらった。笑

2010/03/28

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