イナズマ | ナノ


 入学式から数日が経ち、アタシ達新入生もこの学校にも慣れ始めた4月の某日。恐らくはクラスの大半が待ちに待ったであろう、部活動への入部が遂に解禁された。
 この日は朝からクラス(特に男子)が騒がしく、一緒に来た修也と別れて教室に入った途端アタシはその騒がしさに小さく眉を寄せる。そりゃ、それまで答辞をしたことや中学時代の事から嫌でも興味の目で見られ、同年代は勿論先輩までに声を掛けられたりして散々な目に遭ったアタシにとって自分から興味が薄れる事は大いに有難い事だ。だけどそれとは別に、困ったことが発生すると言うことを知っていたアタシには部活動の事など正直どうでもいい事だったのだ。

「飛鳥ちゃん、おはよう」
「あ、おはよう。秋ちゃん」

 ドアの前でむっつりと立ち尽くしていたアタシの肩を軽く叩き秋ちゃんは柔らかい笑みを浮かべて来る。その笑顔にアタシも思わず笑みを浮かべ挨拶を返していた。(流石、秋ちゃんスマイル)
 やはり友達がいると自然と会話が弾んでいつの間にかアタシ達は自席に着くと、不意に秋ちゃんから苦笑めいた口調で「あの事、皆に話した?」と訪ねられた。それに対して露骨に顔をしかめると秋ちゃんは今度こそ苦笑を浮かべて小さく小突いてくる。アタシは小突かれた額を押さえながら口を開いた。

「む、無理だよ……だって考えてみてよ、初日に校長から呼び出しくらってビクビクしながら行ったら、イキナリ生徒会の副会長やってくれないか。って言われたなんて皆に話した所で信じると思う?!」

 アタシだったら無理だわ!!と言って机を叩けば彼女はまぁまぁ、と困った様に手を出した。……そう、今アタシが秋ちゃんに言った事は事実なのだ。入学式が終わり、只でさえ視線が痛い中校長に呼び出されて更に集まる視線に正直アタシが何をしたんだ!と泣きそうになりながら行けば、そこには高級そうな椅子に座り優雅に微笑む夏未ちゃんと彼女の側に立つ校長がいて、久しぶりに見たその懐かしい光景に面食らったのを覚えている。(校長が違うものの、中学時代にも何度か似たような光景を見たことがあったから)
 そういえば夏未ちゃんが高校に入学したことで今度は此処を彼女が理事長代理をしているんだっけ……と呆然としているアタシに夏未ちゃんは可笑しそうに小さく笑って校長に目配せをすると、先程話した言葉がアタシに掛けられたのだ。
 勿論訳が解らないアタシはその話を断れば、元々夏未ちゃんはアタシを生徒会に入れようとしていた事を話してくれた。(理事長代理として動く夏未ちゃんにとって、アタシが入った方が生徒会が動かし易いらしい)入学式での答辞も、先生達にアタシを認めさせる為だったとか。幸か不幸か、先生達から好評を貰ったために正式にアタシの生徒会入りが決まったそうだ。何て言う強引さだ、と思わず顔を歪めるアタシに校長は申し訳なさそうに汗を拭き、ペコペコと謝ってくる。その様子を夏未ちゃんは横目で見ながら口を開いた。

「飛鳥さん、貴女には人を統べる素質があるわ。中学時代での絶大な有名度とカリスマ性がある。……その力を私に貸して欲しいの」

 真っ直ぐな瞳で見つめられアタシは口をつぐむと思わず頷いていた。……その時何で頷いたのかは未だに自分でもよくは分からない。でも確かな事は、アタシを必要としてくれているのなら、それに協力すべきだろうと言う思いが少なからずあったから頷いたのだと思われた。
 アタシの返事に夏未ちゃんは満足そうに頷くと「正式に生徒会として動いてもらうのは部活動が始まる日よ」と言われ、ええっ?!と声を上げる所でアタシの回想は終わった。
 ……思い出しただけで出てくる深い溜め息は、朝の予鈴によって見事なまでに掻き消されてしまった。


女王様の思惑
((サッカー部の面子、知ったら起こるだろうなー…))
(飛鳥ちゃん……だ、大丈夫?)
(んー大丈夫……)
((飛鳥ちゃんの事を思ってだと分かるけど、まぁ夏未さんも意地悪な事しちゃって……))


――――
続きを書いて!というコメントを頂いたので書きました。
しかし久々すぎて書き方が大いに変わった気がします(笑)
それに無意味に長たらしくなってしまいました;;

因みにイナズマキャラバン面子は全員サッカー部に入る予定です。秋ちゃんもマネージャーとして入る予定です。

飛鳥さんは……どうなるのでしょうね。続きはビス子の気が向いたまたの機会に(笑)

2010/01/31

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