イナズマ | ナノ

カトレア

04 白の世界




 目が覚めると目の前には真っ白な天井が広がっていて、ベットにアタシが寝かされている所を見ると多分此処は病院なのだろうな、と予測出来た。

「あれ、アタシ……生きてる……?」

 不意に零れた呟きにガタン、と椅子が倒れるの音がする。誰だろうと。と思って起き上ろうと少し動いた瞬間強烈な痛みが全身に広がり、ベットに再び倒れこんでしまった。

「飛鳥ちゃん!! 無理しちゃだめよっ」
「叔母さん……?」

 涙目になった叔母さんに包帯だらけの手を握られ、漸くアタシの体がボロボロだったんだな。と他人事のように思えた。

「良かった……ホントに、飛鳥ちゃん。奇跡だったのよ。大きな怪我もしないで……」
「叔母さん、泣かないで。アタシは大丈夫だから」

 そう言って笑いかけると叔母さんはもっと泣きだしてしまい、困っていると視界の端で見覚えのある姿が見えて思わずアタシは声をあげる。

「ご、ご、豪炎寺君?!どうして此処にいるの?!」
「……落ち着いて、飛鳥ちゃん。……そんな所にいないで、こちらにいらっしゃい」

 叔母さんが豪炎寺君に声を掛けると彼は遠慮がちにアタシの方へと来た。豪炎寺君を見た瞬間、彼とあの小さな女の子が重なって見える。彼女の事を思い出し、アタシは体の痛みを忘れ豪炎寺君に掴みかかった。

「夕香ちゃんは?!夕香ちゃんは、どうなった、っう……!!」

 襲ってきた痛みに倒れそうになるアタシを、豪炎寺君が支えてくれる。ゆっくりと寝かされ、豪炎寺君の表情を見ればとても辛そうな表情を浮かべていた。
 行きついた結論にアタシは愕然とする。

「……まさか、嘘、でしょ?」
「夕香は……目を覚まさない。すまない、守ろうとしてくれたのに……っ、」
「そんな……っ、」

 ユニフォームを着たままの豪炎寺君はきっと、物語通り試合前に来たのだろう。変えられなかった現実に、アタシは唇を噛みしめた。


2009/10/05


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