イナズマ | ナノ


 鏡の前でアタシは馴れない手つきで自身の首にネクタイを締めた。漸く納得の行く形になったので、最終確認のつもりで鏡に映るアタシに笑みを向ける。……よし、これで大丈夫だ。
 支度が終わりリビングに降りれば、綺麗に正装した叔母さんと叔父さんが迎えてくれた。アタシの姿を見た叔父さんは嬉しそうに目を細め、頭を撫でてくれる。(アタシは叔父さんのこの笑顔が大好きだ。見てるとアタシも嬉しくなる)

「こうやって見ると、飛鳥も大きくなったんだなってしみじみ思うな」

 うんうん、意味ありげに頷く叔父さんにアタシと叔母さんは顔を見合わせて笑ってしまった。……そう、今日はアタシがこれから通う高校の入学式なのだ。(因みに高校は雷門中の附属高校だったりする)
 ……ネクタイをしているのも、式典これを着用する様に決まっているからだ。普段はリボンで良いらしい。

「飛鳥ちゃん、答辞の方は大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。一杯練習したからね」

 そう言って微笑めば2人は安心した様に笑ってくれた。鞄の中に入った答辞の紙をアタシは確認し、小さく息を付く。……そう、事もあろうに(夏未ちゃんと先生達からの強い要望で)アタシは入学式の答辞を任されてしまったのだ。最初は断ったけど、守達中学時代のイナズマキャラバンのメンバーにも後押しされ、結局引き受けてしまった。

 叔母さんにはあんな風に言ったものの、やっぱり緊張するなぁ……。と内心零しながら通学鞄を閉める。とその直後、家のインターホンが鳴った。
 その音に叔母さんは嬉しそう笑うとにパタパタと玄関に走って行く。叔母さんに続いてアタシと叔父さんは玄関に向かうと、そこには見慣れた顔が居て、アタシは小さく笑みを零した。

「お姉ちゃん!」

 可愛いワンピースを着た女の子……夕香ちゃんは靴を脱いで抱きついて来る。アタシも飛び付いて来た夕香ちゃんを抱きとめ、軽く頭を撫でた。後ろから夕香ちゃんと修也のご両親が玄関に現れたのでアタシは笑みを浮かべ会釈をする。

「飛鳥ちゃん、大人っぽくなったね」

 そう言われアタシはそんな事無いですよ、と苦笑をする。……あれ、そういえば修也の姿が見えない。オジサン達に問えば、外に居るよ。と答えてくれた。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんに会うの恥ずかしいんだよ!」

 そう言って笑う夕香ちゃんにアタシは思わず口を噤んでしまう。大人達がニヤニヤと意味ありげ笑ってアタシを見て来るので、思わずアタシは逃げる様に外へ飛びだした。

「修也!」
「……っ?!」

 声を掛ければ修也は此方に振り向いた。アタシを見た瞬間驚いた様に目を見開き、ふいっと顔を反らしてくる。(ちょ、酷くない?)
 何よー。と文句を言いながらアタシは修也に近付くと、彼を見上げる様に睨みつけた。こうでもしないと、もう身長が釣り合わないのだ。……高校に入るまでに修也はグングンと身長を伸ばして、いつの間にかアタシと頭一個分以上の差が出来てしまった。(身長伸び過ぎでしょ、狡い!!)

「ねぇ、修也ってば」

 真新しい制服に身を包む修也は今までとは違って、とても大人っぽく見えてカッコ良かった。(本人の前では絶対言えないよね)
 アタシは背伸びして彼の頬を両手で包むと、無理矢理此方に顔を向かせた。目と目が合い、アタシが微笑むと修也の頬が少し熱くなるのが分かった。(……もしかして、照れてるの?)
 それが嬉しくて思わず可愛いなー。と呟き少し頬を緩ませると修也は少しムッと顔を顰めて、アタシの手を剥がすと今度は修也がアタシの頬に手を添えて来た。

「……飛鳥の方が、可愛いだろ」

 ポツリ、と耳元で低い声で囁かれ、頬が急激に熱くなる。……声を上げたアタシに修也は満足そうに笑うと、優しく頭を撫でてきた。


青春しようぜ!
((うわぁぁぁ、反則だよ……っ!!))


―――
拍手で続き書いて欲しいとご要望が沢山来たので書きました。
続くかは未定(笑)

2009/11/16

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