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(Tumblr元画像:http://ginga-utage309.tumblr.com/post/41614644753)

彼女は煙草を吸う。

「どんな味?」

初めて彼女とデートをした日、僕は彼女にそう訊ねた。非喫煙者である僕を前に申し訳なさそうに煙を少しずつ吐き出す彼女に、気にしないでほしいと笑いかけたあとの話だ。

「これ?」
「そう」

アメリカンスピリットの箱を指で弄び、ふう、と紫煙を吐き出す彼女は、どこか憂いを含んでいる。

「あんまり、女の人が吸う銘柄じゃないよね」
「意外。銘柄とか分かるの?」
「少しだけ」

午後の公園に人は少なかった。少しだけ湿った木製の階段に、白く燃え尽きた灰が落ちる。

「命をね、」
「え?」
「命を、燻す味がする」

そう言って薄く微笑んだ彼女の横顔は、まるで泣いているようで、僕は何も言えなかった。
ただ、そっと触れてきた彼女の手を、握り返すだけだった。


20130128

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