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「遺書を書いておくといい。」
「は?」
「遺書だよ。」
「イショ?」
「遺書さ。知らないのかい? 遺言状とも言うけど。」
「え、あ、いや。いやあの、それは知ってます。知ってますよ勿論。でも、あの、」
「では、書いておくといいよ。ここに紙と万年筆はあるから。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。」
「ん?」
「なんで遺書なんて書かなくちゃいけないんですか?」
「え?」
「え?」
「何言ってるんだ君。遺書は生きるために必要なものだからだよ。」
「死後のためのものでしょう?」
「何を馬鹿なことを。」
「え?」
「いいかい?人間、生きていれば必ず、死んだほうがマシだという場面に直面するんだよ。」
「死んだほうがマシ・・・?」
「そんな場面に行き遭ったら君はどうするんだい?」
「どうする、って言われても。」
「そんな時にこの遺書が役に立つのさ。これがあれば、死後の問題を気にせず、すぐに死ぬことができるよ。」
「は?」
「思い立ってから遺書を書くなんてげんなりするだろう? 気持ちも萎えるというものだ。どうしたんだい、目を点にさせて。」
「いや、その、その状況を打破しるとか、努力する、とか。」
「あっははは。面白いこというねえ君は。死んだほうがマシ、なんて思うほどの状況を打破する方法なんて、結局死んでしまうくらいしかないんだよ。努力なんて無駄無駄。面倒だし。成功する確率だって低いんだからさ。さあほら。万年筆を取って。気楽に考えなよ。時間はたっぷりあるんだからさ。」
「は、はあ・・・。」

20121116

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