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「未来にはいろいろな選択肢があるの。」
「選択肢。」
「そうよ。何本も、道があって。私は、その中からたった一つだけを選ばなくちゃならない。」
「へえ・・・。それは、そのあとは、一本道なの?」
「いいえ。もちろん、また、何回も枝分かれするの。」
「そうなんだ。」
「ええ。何本もある、その道々にはね、当たりと外れがあるの。」
「あたりと、はずれ?」
「宝くじみたいに。」
「当たりの道だと?」
「まあ、基本的には幸せね。」
「外れだと?」
「辛くて苦しいわ。」
「外れは引きたくないな。」
「誰でも、そう思うはずだわ。」
「運任せなんだね。」
「それが、そうとも言えないらしいのよ。」
「え?」
「選択肢の中でも、比較的確実に当たりの道にたどり着けるらしいの。条件を満たせば。」
「条件。」
「そう。」
「それは嬉しい情報だ。」
「それが、そうとも言えないと思うわ。」
「どうして?」
「その条件を満たせるのは、基本的には限られた人だけだからよ。」
「限られた。」
「選ばれた?とでも言ってもいいかもしれないわ。」
「ふうん・・・。誰でもじゃないんだね。」
「そうよ。まず最初に、その人たちが当たりの道を歩いて行くのよ。」
「へえ。じゃあ、当たりの道は、減っていってしまうのかい?」
「まあ、そうとも言えるわね。」
「それは不公平だなあ。」
「それは、仕方ないのよ。選ばれてないから。」
「仕方ないのかい。」
「どうしようもないのよ。」
「ふうん。」
「ねえ。」
「ん?」
「辛くて苦しい道を選んでしまったら、どうする?」
「外れってこと?」
「ええ。それも、選べる選択肢の中でも一番苦しいの。」
「それは嫌だなあ・・・。君は?」
「私も、嫌よ。でも、私は選ばれていないから、その道を選ぶ可能性があるの。」
「可能性。」
「そうよ。」
「そっか。」
「もしね。」
「うん?」
「もし、そんな道を選んでしまったら、私、もう、生きていたくはないわ。」
「・・・・・・、」
「それが、怖いの。私にとって、自分で選ぶっていうのは、とても、恐ろしいことなのよ。」
「そうだね。選ぶことは、可能性を捨てることと、同義だから。」
「怖くはない?」
「僕?」
「ええ。」
「そうだね・・・・。好きな事はないの?」
「え?」
「なんでもいいよ。好きなこと。それをしていれば、幸せなこと。」
「・・・ある、けど。」
「じゃあ、それを好きでいることの道にすればいいじゃないか。」
「・・・だめ。ダメよ。そんなの。」
「どうして?」
「だって、そんなの、本当に、逃げられなくなってしまうわ。」
「逃げる?」
「逃げ道が、なくなってしまう。」
「そうかな。」
「そうなのよ。」
「そっか。じゃあ、もう、どうすることもできない。ね。」
「・・・・・・。」
「せめて、君が外れの道を選ばないことを、祈るくらいしか、できないよ。」
「祈りなんて、誰も聞いてはくれないわ。私たちは、結局、独りなんだもの。」

20121110

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