text | ナノ


「宇宙って四角いと思う?それとも丸いと思う?ぶっ壊す前に知りたいわよね」

 何を言ってるんだこいつ頭大丈夫なのかよああそうか遂に本当に螺子が飛んじまったのか仕方ないいつかやると思っていたんだ俺はだって今まさにこいつのぶっ飛んだ頭のせいでこんな状況になっちまってるんだからそうか俺は気づくべきだったんだこいつと出会う前にいや生まれる前から気づくべきだったぜ俺ってばまじどんまい。そんな風に、男は重く深い後悔の念と懺悔を掻き混ぜた罵声を一通り己の奥底でぶちまけた後、鈍く金色に光る瞳を彼の後悔の核となるものへ向けるのだった。事実アスファルトにぶっ飛んでしまった彼女の頭の7本の螺子を親切にも拾ってやりながら。当の本人は自分の頭の部品がいくつか足りていない事実の報告を視覚情報に映しながら、しかしそんなことは気にも留めずににこにこと男に笑いかける。お礼の言葉と交換に螺子を受け取って、ごくん、と飲み込んだ。螺子を食べる少女というのはなんともシュールな絵面をしていて初めて見たときはどこのB級映画かと思ったものだった。むしろどんなB級映画だ。そうして、ねえ聞いてる?という少々苛ついたような声で問いかけられたのは彼女の体内修復が終わった直後のことだ。

「あァ聞いてる聞いてる」
「で?」
「は?」
「どっちだと思うの?」
「何が?」
「ほら、やっぱり聞いてないじゃない」

 困った人ね、とまるで長年連れ添ってきた夫婦のようなため息と感想を言い添えられて男はようやく少女の問いを思い出す。宇宙が丸いか、四角いかだって?

「宇宙に形なんかある訳ねえよ」
「あら、そんなこと断言なんてできないじゃないの。視野も思考回路も狭いのね」
「そりゃあ熱と超音波感知装置で前後左右の状況把握ができるアンドロイド様に比べりゃあ俺の視野は狭いでしょうよ」
「馬鹿ねそういうこと言ってるんじゃないのよ。あと上下も感知できるの嘗めないで」
「分かった、分かったからその足に仕込んだ機銃を仕舞え目に毒だから」
「目の保養の間違いでしょ。私の生足タダで見といて」
「見たくて見たんじゃねえよ…で、宇宙の形の話だったか?」
「そうよ」
「そうだな…あんまり想像はできねえが、形があるとすれば丸なんじゃねえか?」
「どうして?」
「自然界に直線は存在しねえからな」
「ふうん。ということは貴方は宇宙は自然物だと思う訳ね」
「当たり前だろ人間が作ったんじゃないんだから」
「人工じゃなかったら自然物なの?」
「一般的には」
「は、一般!つまらない言葉ねそんなことだから人間って滅ぶのよ」
「なにゆえ断定形なんだ」
「そういう未来だもの」
「なんでお前に予知能力付けちまったんだ俺」
「便利よーこれ、感謝してるわ。お陰で宇宙もぶっ壊せるもの。あ、なんで滅んじゃうのか詳しく知りたい?」
「そこだよ」
「え、人類滅亡?」
「違う宇宙破壊の方。なんで急にそんなこと言い出したんだ」
「ビックバンが見たいの」
「そんな純粋な好奇心でまさか」
「好奇心は人間を動かす最大にして最強のエネルギーである、by私」
「お前人間じゃねえだろ」

20120527

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -