text | ナノ


 彼の赤いツナギは言うなれば太陽でありまた言うなれば鮮血であり、そして危険信号である。
 正義の味方っていうのはつまりはそう、利己心の塊さ。ツナギは何でもないことの様にそう言ったのだけど、僕にはそれが漠然と真理を言い当てているような気がして振り返った。振り返ったということはつまり僕はツナギの前に居た、或いは歩いていたということになるのだけれどまさしくそれはその通りであり確かに僕はツナギの前を歩いていた。前といっても一歩二歩の差なのだれど。
 ところで利己心というのは「自分の利害だけをはかって他人のことを考えない心」のことを言う。要するに自己中心的思考回路といってしまってもあながち間違いではない。多分。

「それって正義か?」
「とーぜん」
「でも正義って、人の道理に適って正しいことだろう」
「ガレキは莫迦だなあ。莫迦」
「せめてうましかで言えよ」
「あー、うんうん、莫迦莫迦。正義の味方なんてな、正義なんてそんな曖昧なもん掲げてる時点でほとんど詐欺紛いのことやってんだぜ。左と右が見方によって変わっちまうみてえに、正義と…この場合は悪か?悪なんて頻繁に立場替えをしてんだよ」
「じゃあ正義の味方はどうやって自分のことを正義だって主張してるんだ」
「簡単簡単。自分の正義だけ信じてりゃ誰かが適当に尾ひれをつけてくれる」
「他力本願」
「徹頭徹尾」
「要するに君にとっての僕みたいなものと思えばいいのか?」
「うん?ああ、そりゃあまあそうなんだが。なんだガレキ、お前俺のこと正義の味方だって思ってくれてんの」
「何を今更。僕にとってのヒーローは生まれたときから君だけさツナギ」
「ぎゃはは、きしょくわりー台詞だぜ」

20120521

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -