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 朝の道路に。 黒猫が、倒れていた。

「・・・・・・。」

 通常、動物が地に伏せる状況というものはだいたい決まっているものだ。 たとえば休息――睡眠を取るときだとか。たとえば、子供がいるなら、その子供に乳を与えるときだとか。そういうもの。 それらに共通するのは、安全。 眠るときも、乳を与えるのも、より安全な場所で安全な時にされるものだ。 野良であろうその猫の行動条件も、きっと同様に。
 だからこそ。 だからこそ、道路という場所は不自然であって。 倒れた猫の手前に赤黒い染みがあったのは、とても自然なことだった。 血。 生命を構成するものの一つ。
たとえば、血のある場所と倒れている場所が少し違うのは、車に撥ねられた瞬間血を吐き、その衝撃で飛ばされ、そこが死に場所となったということが予想されて。 つまるところ。 すでにどうしようもなく。 黒い野良猫は、死んでいた。
 僕の自転車はその脇を通り抜けて、駅へと急ぐ。 すれ違う瞬間。

「・・・・・・っ、」

 かすかに開かれた眸は、金色。 目が、合ったような気がした。 僕が何かを思う前に、瞬く間に後ろへ遠退く、かつて猫だったモノ。

「にゃおん。」

 今日は、嫌な日になりそうだ。

20110125

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