ごちそうさま、とお行儀よく手を合わせて食後の挨拶を済ませると、わたしの隣でもそもそとカツサンドを頬張っていた仁王もわたしに倣うようにぱちんと両手を合わせた。なんだよお前らもう食わねえのかよ、少食だな。むしゃむしゃと焼きそばパンにかぶりつきながらわたしたちにそんな視線を向けてきたブン太に、そんなんだからあんたはいつまでたってもぶーちゃんなんだよ、と言ってごろんと寝転がる。ブン太がぎゃあぎゃあ文句を言ってきたけど無視だ、無視。目の前で大量のパン食べられたらそりゃあ食欲も無くなるっての。


「こら、食べてすぐ横になったらぶーちゃんになるぜよ」
「なにそれちょうこわい」
「だからぶーちゃんって言うなお前らあああああ!」
「あ、でも仁王は細すぎだしもうちょっと太ったほうがよさそう。
ってことで一緒に寝よ、仁王」
「そうかもしれんのー」
「人の話を聞けえええええ!」


にやにやと笑いながら寝転がった仁王のわたしを挟んで反対側に、拗ねた様子のブン太がずざざっとスライディングしてきた。ごめんね、かまってもらえなくって寂しかったんだね、ブン太。さあ、お姉さんの胸に飛び込んでおいで。そう言ってだらんと両腕を広げたら、黙れちっぱい、と罵られた。うわああんブンちゃんにいじめられたー!と仁王に泣きついたら、おおよしよし、と田舎のおじいちゃんみたいな様子で頭を撫でられた。そのままふざけて仁王にぎゅーっと抱きついたら、後ろからぎゅー、ってブン太が抱きついてきた。あらやだこのこかわいい!最近流行りのツンデレってやつかしら!


「しっかしええ天気じゃのう」
「そーだねえ、もうすっかり夏だねえ」
「5限グラウンドでサッカーらしいぜぃ」
「だるいのー」
「わたしここから丸井くんの勇姿を見守っとくよ」
「黙れ貧乳」
「黙れ丸い」
「イントネーションが違う!」


ぎゅうぎゅうくっついたままきゃいきゃいと騒いでいたら、だんだんと眠たくなってきた。爽やかに吹き抜ける夏の風が涼しくて、授業を受ける気力があっという間に削がれていく。ああもうむり、おやすみなさい。そう呟いたときには仁王もブン太もすやすやと寝息をたてていて、わたしも清々しい気持ちで眠りについたのであった。まる。追伸、ここでサボってることが真田とかやぎゅーにバレないことを祈るばかりである。


午後の子守唄
(姿が見えんと思ったら、こんなところで授業をサボっておったとは!たるんどる!)
(だいたいその格好はなんですか!年頃の男女がはしたない!)
(………おい、今日の体育A組と合同じゃったんか?)
(すっかり忘れてたぜぃ)
(最っ低、だからあんたは丸井なんだよ、ブン太が)
(全国の丸井さんに謝れええええ!)
(やかましい!)
(ほんとに反省してるんですか!?)
((………もう泣きたい…………))


トライアングルさまに提出。
ありがとうございました!




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