世界にさよならを | ナノ


赤髪の少年、赤司の問いかけに内心これからどうするかを脳をフル回転させて考える

まだ私自身この状況をきちんと理解していないし、記憶だってあやふやなのに…その上黒バスキャラが出てきてしかも赤司?!
なにこれ?夢?全然おいしくない!!
まず、ボロを出さないように…極力嘘はつかないでおこう…

「何者って言われても…私もさっきこの教室で目が覚めたばかりで…」
「名前は?何故ここに?」

苦笑いを浮かべて答えるも、まるで惚けるな、とでも言うように鋭く赤司から問いかけがとぶ
他の3人も警戒し、赤司の問には口を挟まず無言でこちらを見つめている
見知らぬ場所で見知らぬ人、恐らくイレギュラーは自分だけだと悟る
出来るだけ不信感を抱かせないよう、此処で疑われて弾き出されたら、自分は確実に死ぬ

「んじゃ自己紹介するね。名前は名無しの花子、社会人です。ここに来る前の記憶は殆どないや…多分家にはいたと思うんだけど…」

申し訳なさそうに苦笑いして話す花子に警戒心も少し解けたのか、桃色の髪の少女、桃井さつきが不安げに問いかける

「あの…その剣は?」
「これ?この教室を探索してたらロッカーに…あ、あとこれはポケットに入ってた、見覚えはないなー」

ふおおお…鈴を転がすような声…!超絶美少女!!やっぱ本物は違うわ~
脳内ではそんなオヤジ臭いことを考えながら、彼らに見やすいよう剣と暗号の紙を近くの床において下がる
それを見た赤司は紙を手に取り食い入るように見つめた

「これって赤司くんが持ってたのと同じ紙だよね!」
「そうらしい…ならば貴方もこの現象に巻き込まれた、ということですか?
「多分、そういうことだと思うよ」

赤司の目はまだ花子を貫くように見ている
きっとまだ信用はされていない、この現象の犯人だとも疑われているだろう…様子を見るつもりか?

「ここにいても始まらない。何処か安全なところを探してそこで話そう?」
「安全なところって言ったって…」
「私こういうホラーゲームとか良くするんだけど、大概安全圏として体育館があるんだ」
「なるほど、さっき窓から1階を見た時明かりが付いているのが見えた」
「下に降りようと探索していたらあのバケモノに追いかけられてしまって…」

花子の提案に金髪少年、福井健介が眉間にシワを寄せながら答える
ホラーゲームについて話すと、納得したように赤司、そして水色の髪の少年、黒子テツヤが先ほどの状況を説明した

「それではまず階段を探して1階に降りて体育館へ行きましょう。話はそこで」
「わかったわ、えーと…」
「すみません、自己紹介がまだでしたね。俺は洛山高校1年の赤司征十郎です」
「わ、わたしは桐皇高校1年の桃井さつきです…!」
「誠凜高校1年の黒子テツヤです」
「陽泉高校3年の福井健介…です」

不自然でないように名前をきくと順に自己紹介をしてくれた
福井の少し不満そうな敬語にクスリと笑みが漏れる

「ふふっ…無理に敬語使わなくていいよ~さっきはごめんね?福井くん」
「さっきのことはもういい!~~っじゃ遠慮無く…」

"さっき"と言われまたブワッと顔が赤く染まった福井は思わず声を上げるも、真っ赤な顔を隠すように髪をかきむしりそっぽを向く
かっかわいい…!!思ってみればみんな高校生だから年下か…年下かわいいな…
危ない思考に浸っていると視界に入る桃色
見下ろすと超絶美少女、桃井さつきがいた

「あのっ、さっきは助けてくれてありがとうございました!名無しのさん、とってもかっこ良かったですっ!」

キラキラと大きな目をさらに大きくして、胸の前で手を組み花子を見上げる桃井はまさに天使のようだった。破壊力がやばい…!

「そんなことないよ~私もパニクっちゃって…桃井ちゃんだっけ?」
「さつきって呼んでください!」
「んじゃあ私も花子でいいよ~よろしくね、さつき」
「はいっ花子さん!」

かわいい女子と話してほのぼのしていると切り上げるように赤司か話を始める

「とりあえずここを出て体育館へ向かおう。名無しのさん、階段は?」
「さっきの左側のと、ここを右に行けば下に続くのがあったよ。体育館はどのへんにあるの?」
「反対側の校舎のとこらから渡り廊下が伸びてたからその向こうだと思う」
「さっき走っているとき、この教室棟からも渡り廊下が伸びていたのでそこからも行けそうです」

福井、黒子も先ほど見た校舎の様子をまとめて伝える
赤司が考えこむように口に手を当てていたが、考えをまとめたのか真っ直ぐに花子を見つめる

「少々遠回りですが、安全を考えて教室棟の右側の階段から向かいましょう。俺、桃井、黒子、福井先輩の順で。名無しのさんは先頭でおねがいします」
「ちょっと赤司くん!女の人を…」
「大丈夫だよ、さつき。武器を持っているのは私だけ。そういうことだよね、赤司くん」
「ええ、お願いできますか」

反論するさつきを宥めながら赤司を見つめる
その問いかけに?マークついてないよね…
内心苦笑いをしながらも顔はポーカーフェイスで微笑む

「わかった。これでも武術習ってたから任せて~」
「頼もしいです。それでは行きましょう」

へらりと笑ながら床においていた剣を手に扉に向き直る
背後のさつきの不安そうな視線と共に見極めるように貫くような視線は変わらない
今私は試されている
ここで信用を得ないと今後の行動に響く
天帝の眼を持つ赤司だが高校生。そんな簡単に見破られたりしない
ほんの少しの矜持で笑みを顔に貼り付ける
廊下からは音はしない
大丈夫、生きてここから出てやる

「じゃ、開けるよ」

扉にかけた手が震えているのには気づかないふりをした

(突き刺さる懐疑の視線)(味方は、自分のみ)
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