風邪気味天使
小説 長編 | ナノ

Story               


「ニア」
「何でしょう」
「マット返して」
「なぜです、これは私のです」
「私のだもん! 返してええええええ」
「……ちょっと、引っ張らないでください」


さっきから名前が連呼している『マット』は勿論本人ではなく、マット本人がゲームセンターでとってきた、赤いクマのぬいぐるみ

私へのプレゼント、だった、はずだが、



『マットがとってきたぬいぐるみ……赤い………』



…それで名前がマットになった訳だ。

モニター室に転がるマットのせいで不毛な喧嘩が繰り返されることもしばしばで、



「ニア〜返してよ〜」
「…名前」
「何?」
「その『マット』という名前、変えませんか?」
「えぇ、どうして」
「今まで言いませんでしたが…………



非常に不愉快です」


「どうして」
「恋人の前で他の男の名前など普通は出しませんし、紛らわしいです」
「ええー、全然紛らわしくないよ」
「紛らわしいです」
「どこが紛らわしいの」
「紛らわしいのです。」

ニアなら違いくらい分かるでしょ、と膨れっ面になる名前。

可愛い、が、やはりぬいぐるみをマットと呼び愛撫している彼女は見たくないし、何より許せない。

「名前」
「何?」
「ニア、はどうでしょうか」

んー、と唸る名前。
その数秒後、

「ニアはニアだもん。やだよ」

頬が少し紅潮している。

……そうか。

「……名前、ぬいぐるみ、よりも…、私を愛して下さい」

そう言うと名前は頬をほころばせ、
私に抱き付いた。

「言われなくても、ね?」



それから甘い、口付け一つ。

砂糖みたいな、時間の中。





◇◇

「あ、ニア」
「どうしました」
「メロは…」
「却下です」



甘いプレゼント


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