風邪気味天使
小説 長編 | ナノ

Story               


「名前〜」

マットの声。リビングからかな?
洗い物を済ませ、手を洗い、リビングに戻る。
そして戻るや否や名前は、マットを見て絶句した。

「………何やってんの?」
「え、何って……だから、今ケーブルを」
「…溺れて死ねばいいのに」
「ひでぇ」

目の前に広がる、ケーブルの海。
家事に疲れた私を更に追い込む気か、哀れなマットよ

「どうやったらこうなんの」
「ゲームしてたらこうなんの」
「それより仕事行ってきなさいよ、メロだって疲れてるはずだよ?」
「あいつはどうでもいいよ。それよりもさ、名前、一緒に遊ばねえか?」
「は? どうせまたゲームでしょ、でまたこうなるんでしょ」
「だってすることねえんだもん」
「仕事しろや」


他愛のない会話、約6分。
知恵の輪みたいに複雑に絡まるケーブルを全てほどいたマットと名前は、疲れたのかその場で泥のように倒れこんだ。

「あ¨ー、疲れたー」
「ちゃんと掃除してね、本当に」
「名前、アイス取ってきて」

はあ、と小さなため息ひとつ。
でも愛するあなたのためなら。


「ああ、疲れた後のアイスはサイコーだなー」

名前は微笑んだ。

今日一の幸せだ、とマットは心の中で呟いた。
笑顔の方が最高かもなぁ。



名前、きみに溺死




花の海、溺死


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