ドラマでありがちな、酔っ払いながらの帰宅。片手にはお土産なんてぶら下げて、ネクタイは頭に巻かれてて玄関に倒れこんで水を求める。


…とは残念ながらいかなかったが、今現在ハルの前で倒れている獄寺隼人は明らかに酔い潰れていた。

「あー……ハルだー」

「ええハルですよ。とってもアングリーなハルですよー」

遅くなるならなるで連絡しろと何度言えばわかるのか。今週で何回目になるかわかっているのかこの男。

──…と、思っていても口に出さないのが良い妻。そう自分に言い聞かせ、廊下で微睡み始めた酔っ払いの腕を力いっぱい引っ張った。


「ほら、風邪ひきますから……」

「はーるー」

「はいはい。ハルちゃんですよー」

女の力で持ち上げるのは不可能だから否応無しに引きずる結果になる。
隼人の足や腕が壁に当たって痛そうだがそんな事に気をつかっている暇はない。

今ハルはひたすら睡眠を求めていたのだから。



「スーツ脱ぎましょうね」

「はーるーさーん…」


「何ですかー?お水ですかー?」

「んんー……」

「はひ?」


獄寺のもにょもにょ動く口元に耳を近づけた。


「ねみぃー……」


「…ハルのセリフです……」


ハルのこの恨みがましい言葉は獄寺の頭の中を右から左へ通り抜けているのだろう。そう分かってはいるのだが言わずにはいられない。

リビングに着き、隼人のネクタイを取り去り苦しくないようシャツのボタンを外してから今にも夢の世界へ飛び立ちそうな隼人の肩を叩いた。

「今日はソファで寝て下さい。自業自得ですからね」

「あーい」

「はぁ……」


落としていた肩と顔を上げれば既に夢の中へと旅だってしまった隼人の姿。
いつも上がっている眉がだらしなく下がった赤い顔は「凶悪」からは程遠い。

「可愛い顔しちゃって、まぁ」

ふふふ、と笑みを浮かべておもむろに携帯を手にするハル。ぐてっとした決まらないポーズでソファーに横たわった夫を、ハルはパシャリと一枚携帯に納めたのでした。






そして翌日。

「隼人さん隼人さん!ハルの待ち受け可愛いでしょう!」
「消せぇぇぇ!!頼むから消してくれぇぇぇぇ!!」


奥さんを困らせると倍の報復が待っているらしい、
獄寺家



(あ、間違えてツナさんに送っちゃいました)

(お前わざとだろ!)








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