「おーい獄寺ー!」


やけに明るすぎる声に振り返れば、やっぱり奴が居やがった。


「気安く話しかけんな野球馬鹿」

「なぁ獄寺。おまえ今ヒマか?」

「10代目の右腕であるオレは、たとえ10代目がいなくても、10代目をどうお護りするか考える事で忙しいんだ。
てめーの相手なんかしてらんねーんだよ」

「ちょうどいいや、キャッチボールやんね?」

「てめーオレの言葉通じねーのか」


オレが心底嫌がってるっつーのに、あいつはヘラヘラ笑いながらオレを無理矢理芝生へ引きずりやがった。
そして今オレは、奴に丸め込まれて既にグローブをはめ、奴が投げてくるボールをキャッチする。
グローブの中に収まったボールを掴み取り、投げ返す。

ただ、そんな事の繰り返しだ。


「つまんなくねーのか?
いつもこんな事ばっかやっててよ」

「そー思った事なんて一度もねーよ。野球はオレの生きがいなんだから…よっ!」

「けっ、アホくせー」


返答の語尾と一緒に投げられたボールを、片手でキャッチしながら答えると、山本は
「やってればおもしろくなるんだって!」
と、また馬鹿みてーに笑っていた。



「……なぁ、獄寺」

「なんだよ」

「おまえがちゃんと答えるかどうかわかんねーけどさ」

「なんだよ早く言え」




「おまえハルの事好きなんだろ?」




………は?


かざしていた腕が止まり、硬直した。
唐突にそんな事を言われ、わけがわからなかった。


「ほら、そっちにボール行ったぞ!」


声の直後にオレの後方の芝生にカサッと落ちる音。
もちろんそこにボールが転がっているだろーが、正直そんなのはどーでもいい。


「なっ…いきなり何だよ!」

「いや、最近おまえら前よりも仲良いからさ。二人でいる事多かったし」

「だから、なんでてめーにんなこと―――」

「好きなんだろ?」


…………。

こいつ、突然オレの何を突こうとしてるんだ…。
一体―――


「……何なんだよ」

「やっぱりな」

「ちげーに決まってるだろ!!」

「わかるぜ」

「だとしても何でてめーにわかるんだよ!!」



「そりゃ……

オレもハルが好きだから」




一瞬、息も動きも全て止まった。


しかし次の瞬間―――

やけに引き締まっていたあいつの表情が、いつものようにだらしなくほどけた。


「なんてな♪ 冗談だぜ!
だっておまえ、ハルがそっぽ向いても、その後もずっとハルの顔見続けてたし」

「ッ……てっ、めー…」

「ホラ、やっぱり好きなんじゃねーか」

「んなわけねーだろ!」

「なかなかしぶといのなー…。
ところでボール……お?」


あいつがボールを拾うよう催促してきたが―――
知らねー、自分で拾え。野球だけの単細胞野郎。

けどそいつは、オレの視界に入れなかったせいで、オレは全く気づかなかった。


「おーい! ハルー!」

「!!?」


山本がオレを通り越して見ているものを信じたくなくて、奴に向かって懸命に念じる。

すまん、山本。
オレが言い過ぎたなら土下座するから、どーか嘘だと言ってくれ。


「はひ!
獄寺さんに山本さんじゃないですか!!」


しかしオレの願い虚しく、カサカサと芝生を踏み近づいてくる音。
その音を掻き消すほどにバカ高く声が上がった。

何だよこの最悪なタイミングでの登場…


「よっ! ハルも遊びにきたのか?」

「ハルはお母さんから買い物を頼まれまして、家に帰ったらヘルプするんです!」

「えらいのなー……
そーいうのってさ! 将来いい嫁になる、って言うよな♪」

「はひ!? そんな言い方させると照れます!///」


さっきの念を、全力で撤回。
山本…てめー骨まで焦がしてやる。

懐のダイナマイトに手ー伸ばして、あいつに向かって数歩足を進めたら、ただでさえ好き勝手言ってる奴が次にとんでもない事を口走りやがった。



「あっそーだハル!

獄寺の気持ち当てるゲームしね?」



……はぁっ!!?///



「はひ? 獄寺さんの……ハートをですか?」

「獄寺の目をじっと見て、あいつの気分を感じるんだ」

「目を見て…フィーリング?」

「そ♪
今もやってたんだけど、あいつけっこーわかりやすいし楽しいぜ♪」


ふざけんのも大概にしろ
こんの悪趣味野球馬鹿ァッ!!!/////


「ほぇー………」


……え?

何でおまえはオレの方に近寄ってくるんだよ?
まさか興味でも持ったのか?
そんな聞くだけで苛立ち湧き上がってくるゲームに…!?



(じぃー…)


……何でだよ?


(じぃー…)


…………でもよ…


(じぃー…)


……こいつの瞳って…


(じぃー…)


……こんな透き通ってるんだな……





「っ!!??」


気づかなかった…無意識だってのか?

いつの間にかオレの右手が空に浮かんでいた。


おそらくその到着地点は―――

目の前にいる女の左頬。



「……ッ!!!///」


気づいた途端、熱が一気に顔中を駆け巡り、体中の震えが大きくなりそれは走る動作へと成り代わった。



「獄寺さん!?」

(…あーあぁ……)



その場に居続けることはとても出来なくて、今まで出せた事がないくらいのスピードで遠くへと駆けた。


憎たらしく苦笑う野郎一人と―――

ポカンと呆気にとられた表情の、陶器のように眩しくて脆い女を残して……。













どうしてくれんだあの野郎……

必死に抑えて封じていたというのに―――











告げる必要も伝える必要も、気づかれる必要もまるで無かったこの想いを―――



もう……止められなくなっちまったじゃねーか…!!!









不覚にもハマってしまったようだ―――






奴の策略あいつの瞳に……!






(ちょっと茶化しすぎて、とうとうパンクしちまったのな〜…;;)

「獄寺さん…一体どーしたんですか?」

「(いい線行ってたんだけどな……)
早めに気づいてやれよな、ハル」

「はひっ?」

「まー今のままでも見てておもしろいけどな、ハハッ!」

「山本さん。おっしゃってる意味がアンノーンです……」








END





*感謝の言葉

ちょ…獄寺君かわえええええ!!!山本に振り回されとる…!なんだこの可愛い生きもの。…山本よ…そこのポジション私に譲らないk(殴)

あとハルの「ほぇー…」に悶えました。悶え死にました。鼻から赤い鼻水でるかと思ったああああ!!!
どうしたらこんなにも愛らしい二人が書けるのか……さすが水城様…!


大事にさせていただきます!有難うございました!!^▽^






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