用紙に書かれたこれから必要になる家具達。
そのメモを見てつい嘆きの声がもれてしまった。

大手デパートに着いて約二時間が経過している。
当初の予定では、既に寝具ぐらいは購入しているはずだ。しかしいまだ購入品はゼロである。
原因はきっと…いや確実にあのアホのせいだ。



「おい。食器は明日でいいだろ」
「ま、まって下さいよ!だってこのコップ可愛くないですか?!」
「………」

たしかこのやり取りはもう3・4回は繰り返されている。
俺は途方もなく肩をおとした。


「…今日は取り敢えず家具を買っておきたいんじゃなかった?」
「………まぁそれはそれ、これはこれ」
「同じだろーが」

ハルはうらめしそうに振り返り両手に持つガラス製のコップを突き出した。

「じゃあこのコップ買います!!!」
「同じの二つもいらないから」
「隼人さんの分ですよ!お揃いです!」
「余計なお世話です」

ハルが持つ、本人曰く可愛いコップの一つを取り上げ元の場所へと戻した。

「じゃあ次こそ家具を…」

「えぇ!せっかくですから、獄寺さんも……」

「……」

「無視ですか!!」

ハルは俺の服の裾を握り締めてその場から離れようとしない。別に力任せに引っ張れば、ハルの小さい体は容易く動くだろう。しかしそうする気にもなれず肩を落とした。

「…じゃあせめてピンクは勘弁してくれ」

「色違いですね!やった!」

あぁ俺も大概甘いよなぁ。


俺はくしゃくしゃになってしまったこれから必要になるであろう家具達が書かれたメモ用紙をポケットに突っ込んだ。



こんな風に振り回されるんだろうな、これからはずっと。


(まぁ悪くはない)





そんな自分に内心苦笑しながらも、俺は取り敢えずハルが持つあの悪趣味極まりない苺コップを取り上げるために一歩踏み出した。








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