「本当に大丈夫か」
「大丈夫です」
「食器割るなよ」
「はいはい」
「なぁ本当に作るのか」
「獄寺さんしつこいです」
ハルに背を押され、無理矢理台所から追い出された獄寺は不安そうに振り向いた。
「………はぁ」
「平気です」
ため息が聞こえたのだろう台所からハルの声だけが返ってきた。
数分が経過した頃、獄寺も諦めテレビを見ていた。
特に真剣に見ているわけではなく、ただボーッとテレビ画面を眺めているだけだったためか台所からの短い悲鳴に敏感に反応した。
「ハル?」
「はひっ!ななななんでも無いですけど何か!」
「なに言って……、おい何で手後ろに回してんだよ」
瞬間ハルの体が震えたのを獄寺は見逃さず、ハルの腕を掴み上げた。
「……またベタな…」
「ほっといて下さいよ…」
ハルの指からは赤い鮮血が流れ出ていて、獄寺は呆れながら立ち上がる。一度台所から姿を消したかと思えば、手に一枚の絆創膏を持って再びハルの腕を掴んだ。
「消毒液ねぇから」
「…………はひ!!」
切れた指はゆっくりと獄寺の口へ運ばれて行きハルは恥ずかしさに何も言えずうつ向く。暫くたつとハルの指にあった感触は無くなり、かわりに絆創膏が傷口を包んだ。
「よし終わり……って、お前何で泣きそうなんだよ」
「ごっ、獄寺さん…が!!あぁもうエロ反対です!!!!」
「は?……つか焦げ臭くねぇ?」
「…………はひ――――っ!!!!」
ハルは慌てて火を止めるが時既に遅く、野菜達の哀れな末路にハルは肩を落とした。
「台無しです……」
「材料まだあんのかよ」
「……有りますけど…、今から作り直すんですか?」
「手伝ってやるよ」
「獄寺さんそれはイチョウ切りにして下さいよ!!」
「別に口に入れば同じだろうが!!」
時間はすごくかかったけれど、その分とても美味しいものが出来たそうです。