地球温暖化なんて関係ないかのように今年も寒い寒い冬の季節になった。
そしてまた、例に漏れずハルは並盛中の校門前にたたずんでいる。
去年と明らかに違う所といえば、彼女と俺の関係だろう。憎たらしい喧嘩仲間だった三浦ハルという存在は、今では『彼女』と肩書きを変えて健気にこのクソ寒い中、俺を待つようになったのだ。
今日もまた昇降口からすぐに見える彼女に口元が綻んだ。
「おい」
「ああぁー!獄寺さん遅いですよーっ。ハル待ちくたびれちゃいました」
「だから、雲雀に言っておいてあるから応接室で待ってろよ」
「それじゃあハルの健気さが出ませんから却下です!」
プンスカと鼻を鳴らすハル。
そんな鼻を真っ赤にしてまでやる事か、と喉まで出かけた言葉を寸前の所で堪えた。
こんな些細な言葉のやり取りで、簡単に喧嘩に発展する事は熟知している。付き合い始めて最初の下校が、そんなもので飾られたくはないんだ。
ハルに負けず劣らず俺も相当健気だ……。
「…ほら、帰んぞ」
「はひ!」
そう歩き出したまでは良かった……のだが
「……天気悪いな」
「…そうですね」
「あー…」
「はひ……」
「…………」
「……………」
「……………」
今までとは違う"恋人"という関係に気恥ずかしさを覚えてしまい、会話は全く続かずさっきから歯切れの悪い状態が続く。
(カッコ悪ィ……)
男なら胸を張って一発キスでも何でもやればいいんだ!
…………到底無理な話だが
ハルと無言で歩く時間が長ければ長いほど、自分の情けなさが身に染みてしまう。どうにかして会話をしようと頭をフル回転させる俺。
そんな俺の頬を何か冷たいものがかすめた。
「あ、雪!」
「は?」
ハルの一言に空を仰げば、曇り空から舞降りる白い結晶。
どうりでこんなクソ寒いわけだと思う俺の手が、暖かい温もりに包まれるのを感じて視線を下ろした。
「こんな寒いのに手袋無しなんて、アホですよ獄寺さん」
「………お前に言われるとは、俺も終わりだな」
出会った頃から変わらない笑顔を見ると、今までの俺が滑稽に見えてきた。
やっぱりお前は変わらないんだな。
だから俺は、握られた手を思いきり握り返した。
さんさんと降り積もる白い結晶は
どこか僕の気持ちと似ている
081129