「日焼け止め!日焼け止めが切れました!」
それはもうこの世の終わりみたいに叫びハルはまだ眠りの最中にいた俺を叩き起こした。
明け方近くまで仕事に追われた俺を見かね、十代目が休みをくれた今日はゆっくり寝ようと床についたのがほんの二時間前。
すでに怒る気力が無い俺は呆気なく剥ぎ取られた布団もそのままに再び眠りにつくためハルに背を向け目を閉じる。
「あああ!ちょっと隼人さん、そんな冷たい!」
「…うっさい」
「今日日射しが一段とキツイらしいんですよ!無いとお出かけ出来ません!」
「知りません。黙れ」
「ハルがこんがりジューシーに焼けてもいいんですね………」
「いいですよ」
冷たく突き放す言葉を言った途端、背中からハルが落ち込んだ気配が伝ってきた。普段から俺に対して何事も強制的な彼女にしては珍しい反応に俺の心が容易く揺れ動いてしまう。
(近くのコンビニなら5分もかからないし……)
…いやいや、たまには厳しくしないと俺の威厳がどんどん損なわれるだろ。
…しかし、こんなに困っているハルを放って寝られるのか。それこそ男としてどうなのか。
「……いや、だ、大体夏は焼けて当然だろうが」
自分の気持ちを誤魔化すように言い訳がましく言う。するとハルは意気消沈したままふてくされたように呟いた。
「…昔、隼人さんが肌は白い方が好きだって言ってたじゃないですか」
「……言ったか?」
「言いましたよ!…だから焼かないように毎年毎年気を使って……!」
「ハル……お前……!」
気がつけば、コンビニへ全速力で走る俺の姿がありました。
君に尽くす人生!
(しかし、白い方が好きだと言った記憶が全く無いのは何故だ)
090729