ハルは、それはもう大袈裟な程に泣いていた。
涙も鼻水も大量に出すその顔は見れたものではなく、擦りすぎて赤くなってしまった鼻も無惨なものだった。

何度も何度も首を縦にふってよく分からない呻き声を出す。鼻をすすれば涙が溢れ、涙を拭けば鼻水が垂れた。
必死に了承をアピールするさまに思わず吹き出せばいっぱいに涙をためた目で避難の視線を寄越してくる。

「っなに、わらって…るんですか…ぁ…」
「ひっでー顔だなぁと」
「うっ…さいです…」

寒さが本格的になってきた今日は、コートもマフラーも手袋もして完全防寒。しかし昼は凌げても夜となればそんなのお構い無しに寒い。顔にあたる風がまるで凶器だ。

「今日はさみぃな」
「……はひ…」
「…なあ、返事は?」
「…わかりま、せんか」
「わかんねぇよ」
「断るなら、あなたをひっぱ叩いてさっさと家に帰ってますよ……っこんな寒い中呼び出して…」
「叩くか?」

そう言い頬を差し出す。ハルの顔は益々歪んだ。


「……ほんと…昔から意地が悪いんですから…」


眉を盛大にしかめるハルはだいぶ落ち着き、もう泣いてなどいなかったが瞳はまだ潤んだまま。

「…ずっと仕事一筋だったじゃないですか、隼人さんって」
「ああ」
「これからもきっと、そうなんだろうなって」
「………」
「それでも、良かったんです。覚悟してました」
「それじゃあお前が可哀想だろ」
「でも、この先ずっと一番は仕事でしょう?」
「どうだろうな」
「隼人さん」
「……ん?」
「もう一回、お願いします」


涙の跡と、真っ赤な鼻。明日にはきっと目も腫れてしまうだろう。化粧はとっくに崩れてて髪も風で乱れている。




そんな彼女が愛しい




「俺と結婚してください」




二度目のそれに、彼女は美しい笑みを浮かべた。










100117



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