始めて彼を見た時。
 天使を見た、と、吹雪は思った。

 吹雪は、神と言うものは信じていた。
 だけども、それが実体として、目に見える存在として信じていた訳ではない。けして目には見えることない、崇めるべき偶像として、彼は信じていた。
 だから、彼は天使が存在しているとは思っていたが、実在しているとは思っていなかった。

 だけども、彼を始めて見た時に思ったその言葉は、反射であった。
 脳裏で考えようとするよりも早く、本能的にその答えが出来上がっていたのだ。



 風に戯れ揺れるのは、絹を織り込んだかのように滑らかな髪だった。その色は、太陽の光を紡いだかの如くの輝きを宿した金色で。同色の睫毛に縁取られた瞳は、沈む夕日の空を丸ごと閉じ込めたような、そんな朱。
 紗金と、紅蓮。
 光のもっともな象徴となる二色が、彼の少女と見間違うほどの美貌を爛々と彩り、まるで、世界は一枚の絵画であり、彼はその絵画の主役であるかと言うかのように、彼の周りのすべてが輝いて、だけども彼を引き立てるためだけのものに見えた。
 まさに、この世に存在する“美”を思うがままに混ぜ込んで、その全ての美が、お互いの美しさを抑制しつつも引き立て、そしてさらに輝きを増させたような、そんな。
 絶世とも呼べる至高の美を身に宿した、余りに美しさすぎる、存在。


 彼を天使と、神に愛された子と呼ばずして、それならば何をそう呼んだら良いのかと、思ってしまうほどに。

 彼――――アフロディと、ギリシャ神話の美の女神に例えられる少年は、美しかった。





∵世界が輝いた日


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